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宝来で語らい

「文ちゃんはじゃあここに住んでずっと何してるの?」

「俺?今、人参。」

「にんじんんん?」

「そ。人参の畑手伝ってるんだ。そこの壁見てみなよ。」

私は言われるままに部屋の壁の外側を見てみた。そこにはマジックで書いた張り紙があってこう書いてあった。

「畑仕事アルバイト大募集! 自給1300円!」

「ほんとだ。」

「俺さ、去年もここで人参手伝ったから、今年は自給も上げてくれたんだ。今ちょうど収穫で、毎日人参機械で掘って収穫してるんだ。」

「へええ~・・・・・・。それで、2年も?」

「ちがうよ~。人参は今が収穫期だからだよ。人参の前はほうれん草だし。米もやったことあるよ。」なるほどなるほど、つまり本当に畑仕事全般なのだ。

「それは・・・たまたま北海道に来てバイト始めてライダーハウスに住んでるの?それともバイク置いてあるの?走って来たとか?」

「あ、俺はバイクじゃないんだ。自転車。」

出た~!噂のチャリンコライダーだ!本当にいたのだ。

「自転車!じゃあチャリンコライダーなんだ!前のライダーハウスでも聞いたよ!自転車でここまで、一体どこから来たの?家はどこ?」

「う~ん。どこからってなんて言ったらいいかなあ~。俺さ、もうずっと旅してるから、前回どこにいて来たかっていうよりも、定住してないんだよね。実家は千葉なんだけどさ。まず最初に自転車で沖縄に行ったわけ。で、沖縄でしばらく仕事していたんだけど、そこからまたず~っと走り始めて、北海道まで来たんだよね。」

「ええええ~!!!」今まで色んな人に会ったけれども、文ちゃんにはかなりびっくりした。

「沖縄にいた時、青森の友達の所に行く用事ができて、でも自分は自転車で沖縄に行ってたから、また自転車乗って行こうと思って、自転車で北上してきたんだ。その時地元の新聞に載ったのが、これ。」文ちゃんは新聞の記事をスクラップしたやつを見せてくれた。そこには確かに文ちゃんと友達らしき人と、自転車が写っていた。「青森にはしばらくいたんだよ。りんご農園を手伝ってさ。手を抜くってのができないから一所懸命りんごやってたらそこのおじさんがすごい気に入ってくれて、ずっとうちでやってくれないかって言ってくれたんだけど、やっぱりまた走り始めちゃったんだよね。でも、そこには通るとき必ず寄るし、去年も収穫手伝いに行ったんだ。」文ちゃんはふと、気がついてCDなんかを並べてあるラックの横に立てかけてある包みを取った。「これ、その沖縄で買った三線。買ったはいいけど、ギターと違って難しいんだ。」

「りんごにほうれん草に人参かあ~。色んな仕事あるもんだよね。」

「そりゃそうだよ、やろうと思ったらなんでもあるんだ。道内なら農業も酪農も漁業もある。あっ、今はちょうどシャケバイだよ。」

「しゃけばい?」

「そのまま、シャケのバイトだよ。」

「シャケって魚の鮭?」

「そうそう、今季節なんだ。シャケバイは短いんだけど、すごい自給がいいから、大人気でさ、募集始めてすぐいっぱいになっちゃうんだ。女の子も仕事あるよ。イクラ洗ったりとかさ。」

「へえ~。イクラ!」募集してすぐ定員いっぱいになるということは、ナビントッシュや文ちゃんみたいに、長期で滞在しているライダーや旅人が多いということなのだろう。季節で場所を移動すれば、いつでも仕事があるってことだ。それにしてもおもしろい~!自分が知らないことってなんてたくさんあるんだろう!

「ねえねえ、一人で自転車で走って日本縦断するのって言うのは簡単だけどすごいよねえ。怖いこととかなかったの?」

「あったさー。一度なんか、橋の下でその日はそこで寝ようと思ってもう支度して、晩飯作ってたんだよ。携帯用コンロでラーメン煮てたの。そしたらおまわりさんが来てさ、火を使ってるの怒られちゃうかなーって思ったら、「ついこの前ここで人が殺されたんだけど、君ここでキャンプするの?大丈夫?」って。思わず「マジですか~~?!」って箸持つ手も震えたよ~!怖いから急いで移動しようと思って慌てて食ってたら、いなくなったと思ってたおまわりさんがまた戻って来てさ、「お前、それ晩飯だろ。これも一緒に食え。」ってコンビニのビニールをくれたんだよ。中見てみたらさ、缶詰とか、いっぱい入ってるの。「残ってもそれならもつから、持って行け。食い終わるまで一緒にいてやるから」って。」

「やさしいねえー!」

「感動したよ。旅してるとさ、そういう変な旅のやつには、人のやさしいのとか意地悪なのとか、すげえよく出るんだよ。うれしかったね。もちろん、その場所は速攻で動いたし。」

「あはははは。」

「それで思ったんだけどさ、渋谷だよ、渋谷。あそこはやばいよ。俺途中で渋谷のスクランブル交差点を渡ったんだよ。まさに自転車で、片方にギターくっつけて片方に三線つけて、すっごい荷物もくくりつけて。服もさ、道内のライダーハウスにいれば普通だけど渋谷じゃあすげえ浮く汚いかっこしてて明らかに渋谷では俺おかしいやつだったんだけどさ。だーれも見ないんだよ、俺のこと。絶対変なんだぜ、でもみんな見ようとしないし見てもこいつ変だ、って思ってもう関心を示さないでまるで見えないものみたいなんだ。あの街は病んでるよ、絶対。あの無視する人たち、怖いよ。」

「うん、それはちょっとわかる気がする。異様なところ、あるよね。」

「俺さ、千葉にいた頃は間違って岩の下に生えちゃった草みたいにヨレヨレだったんだけど、北海道に来たらさ、自分が日を浴びてすくすく伸びている~って実感するんだ。だから、当分旅はやめらんないんだよ。この方が俺らしいんだ。」

それは私にも経験がある。場所が変わるだけでも、人間ずいぶん変われるものだ。

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またもや個性派登場

鈴木食堂を出発してから、海沿いを進んだ。今日は天気もあまりよくなくて空も海もグレイだ。釧路湿原はナビントッシュと一度来ているので通り抜けて、そのまま38号線を進む。浦幌というところから、十勝川に沿う形になり、そのまま内陸へと上ることにした。38号線は帯広の街を横に走り抜けて更に上へ。途中、ガードレールのすぐ横に鹿の親子がいたのが目に飛び込んできた。「わあ~っしか、しか!」一人なのに思わず叫んでしまう。だってすごい近くだったのだ。

昔アメリカに留学していた頃、当時付き合っていた男の子の運転する車で夜走っていて、鹿にぶち当たったことがある。鹿よけの笛を車の両サイドに取り付けていたのだが、長距離を走っている間に片方取れてしまっていたのだ。そしてその取れていた方の側から鹿が道路に入ってきたのだ。アメリカの鹿はもっとずっと大きくて、暗闇からぬっと首を出してライトに浮かび上がった時には2人とも絶叫した!「ぎゃ~~!」ハンドルさばきも空しく鹿の角がガツーン!とサイドミラーに当たった。その勢いで車は大きく右に左に振り回され、やっとの思い出で止まった。もう心臓がバクバクで、彼がミラーが割れていないかとそ~っと触ってみたところ、ミラーは割れているどころか、すっぽり落っこちてなくなっていた。それくらいものすごい衝撃だったのだ。私たちはそ~っとバックしてぽとんと落ちているミラーを見つけて拾うと、一目散に逃げた。大きな鹿に当たるとこちらも大事故になりかねないことを初めて知った瞬間だった。その時の鹿はショックで倒れているかと思ったけれど、バックした時姿はどこにもなかった。無事だといいな、とほんとに思った。でもあの衝撃だと・・・脳しんとうだけですんだかどうかはわからない。怪我してたら・・・ごめんなさい。そんなことを思い出した。野生動物に会えるのは楽しいけど結構危ないことなのだ。

富良野

38号線をず~っと走って行って、トマム山の横を走り、とうとう富良野までやってきた。納沙布岬からたどるとかなりの距離を一日で走ったことになる。もうごはん以外はほとんど休憩なしでひたすら走り続けてしまった。どうしてだか、走って走って先に進むことが楽しくて休憩を取る必要を感じないのだ。でも富良野に来てとうとう日が暮れてしまった。今日はここで泊まることにしよう。鈴木食堂で暖かく寝てから、すっかり車中で寝る気がなくなってしまった。寝袋に入っていても寒いのだ。それにライダーハウスでの情報交換がおもしろくて、楽しみになってきたのだ。地図を見て確認してみると、富良野の街中には何軒かライダーハウスがあった。こんな風にライダーハウスを選べるなんてすごい贅沢な気分だ。まず宝来という所に電話をしてみることにした。

「あの、車なんですけど、今日泊まれますか?」

すると、電話に出たおばあさんっぽい声の人が答えた。「ああ車なの?停める場所あるよ。来ていいよ。」

ラッキー!すぐに私は宝来へ向かった。宝来はきれいに十字の道路が縦横する富良野の街中にあって、近くにコンビニもあった。民宿宝来という看板が出ていた。民宿なんだ。始めに道路脇に停めて中に入り、車を停める場所を聞いた。出入り口の目の前に停めていいということだったので、すぐに駐車してから中に入った。やっぱりいたのはおばあさんだった。

「あんたひとり?」

「はい。」

「ライダーは3階でみんないるけど、あんたは2階の部屋ひとつ貸してあげるから、そこで寝な。1000円でいいから。」

「?」どうして2階なのかな?「ライダーがいる部屋は3階なんですか?そっちはいくらなんですか?」なにか違いがあるのだろうか。

「3階は広い部屋で800円でみんな雑魚寝してるよ。」まあ、ライダーにとっては普通だ。

「私もそっちでかまいませんけど。寝袋ありますし。」

するとおばあさんは真面目な顔をしてずいっと私に一歩近づいて顔を覗き込んで言った。「あんたは2階でひとりで寝な。いいかい、男は信用しちゃなんねえ。」

なるほどー!そこで私は理解した。おばあさんは心配してくれているのだ。それがわかったので、素直に好意に甘えることにした。

「はい、じゃあ2階にします。」そしてその場で1000円を払った。おばあさんはうんうん、と頷いて2階の部屋に案内してくれた。階段を上がってすぐの廊下の突き当たりの部屋で、窓もあるし、布団が何組か置いてあって思ったよりも広い。布団部屋かな?と思った。

「布団使って寝ていいから、ここで寝なさい。」

「え~!布団使っていいんですか?」布団で寝るのも久しぶりだ!

「あ~好きにしていいよ。」おばあさんは言い方は荒いけどやさしい。おばあさんはすぐ自分の部屋に消えてしまい、私は下に行ってティナ坊から荷物を運んだ。運ぶ途中、隣の大部屋で男の子が2人、ギターを弾いているのが見えた。自分の部屋に入って一息ついていると、ギターを弾きながら歌っているのが聞こえる。ライダーは3階にいるって言っていたけど、彼らは誰だろう?なんだかとっても気になったし、突然一人部屋ですごくヒマなので、思い切って隣に行ってみることにした。

文ちゃん

「あの~」私は廊下から顔だけ覗き込んで2人に聞いてみた。「混ざってもいい?」

「おお~俺たちも気になってたよ~。今頃一人でライダーハウスに泊まる女の子なんてさー。」2人とも若そうで、よく日焼けしている。部屋はすごい大きくてだだっ広く、反対側の端っこにもう一人布団を敷いて寝ている男の子がいた。こんな20畳くらいある部屋に3人。

「ここもライダーの部屋なの?」

ギターを弾いていた彼が答えた。「ライダーはライダーだけど、俺たちはもうここにしばらく住んでるんだ。長くいるから、特別にこの部屋を貸してもらってんの。」

「住んでる?!どれくらい?!」

「今2年目。」

「ええええ~!」走って来てそのまま住んじゃう、というか居ついている人がいるんだー!かなりびっくりした。でもそう言われてみれば確かに荷物が壁伝いに並べてある。

「ここの一角は俺のエリアなんだ。俺、青虫文太。」

「あおむしー!?あおむしってあの青虫?それって本名?青虫文太って名前なの?!」

「いんや、ほんとは全然違う名前。」全然違う名前って・・・じゃなんで青虫文太って名乗るんだろう???わけがわからない。道内はナビントッシュといい、青虫文太といい、変な通称が流行ってるのか?

「俺さー、最初北海道に来た時、あんまり野菜がうまくてキャベツばっかりバリバリ生で食べてたから、みんなに青虫って名前を付けられたんだ。」

「じゃあ文太は?」

「それも本名は全然違うんだ。」

「・・・・・・なんじゃそりゃ・・・。」

やっぱりライダーハウスは粒揃いらしい・・・。

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これがさんま丼!

朝、私もライダーも同じくらいに起きてゴソゴソ支度を始めた。支度と言っても荷物をそれぞれの乗り物に積んで片付けるくらいだ。するとちょっとして昨日のおばさんとおじさんが車でやってきた。

「おはよう、昨日はあれから誰か来た?」

「ううん、誰も来なかったんです。」

「そう、じゃどっかで寝たのかな。」おばさん達も食堂を開けて準備を始めた。

「ねえ、ここのさんま丼って知ってる?」私はライダーに聞いてみた。

「おう、俺昨日ここに着いた時、夜ご飯に食べたよ。」

「えっそうなの?おいしかった?」

「うまかったよー!俺さ、旅の間は一日に一回だけうまいもん食っていいって自分に決めてるんだ。でも昨日は朝ランプの近くの市場で豪華に食っちゃって、なのに夜もさんま丼食っちゃったんだよね。だから今日の分がもうないんだ~。でもさ、ここでしか食えないと思ったから食べちゃったんだよ。」

「あー私もそこの市場で朝ごはん食べたよ!わかる!私も毎回良いごはん食べられないからさ、一回豪華に何か食べたら次はコンビニでおでん、とかにしてるよ。」

「だよなあ。ガソリン代なくなったら一番困るしなあ。」

「うん、車はおにぎりじゃ走らないからねえ。」私は考えていた。どうしてもさんま丼を食べたいけど、出発することを考えると今、朝ごはんにさんま丼を食べるしかないのだ。でも朝からまたどんぶりメシというのも・・・いや、べつにかまわないんだけど。

「じゃあ、準備できたし、俺行くわ。」ライダーは食堂に顔を出しておばさんとおじさんに挨拶をすると、メットをかぶって「じゃーねー!」と走って行った。私は全部準備を終えてから、食堂に入った。

「おばさん、さんま丼って今食べられます?」とりあえず朝から可能なのかどうか聞いてみた。

「さんま丼?大丈夫だよ。食べたいの?」

「思いっきり朝ですけどね・・・でも食べたいんですよ~。おいしいってライダーにも聞いて来たし、これももらったんです。」私はフェリーライダーにもらった、この鈴木食堂の50円引き券を出した。

「あ、これ持ってるの。そうだよ、せっかくだから、食べていきなよ。今作ってあげるからさ。これで50円引きになるし。」

よし、私も決めた。朝から豪華だけどさんま丼食べよう!「って、50円引きってもとはいくらなんですか?」

「800円だよ。ところで、あんたはどこから来たの?」

「横浜です。」

「実家も?」

「いえ、実家は**なんです。」

「え~実家も横浜から近いじゃないの。じゃあ@@の近くだね。」

「あ、そうです、ご存知なんですか?」

「前にね、@@から来た女の子がこっちに住みたいって言うから、じゃうちで働けばって言ったら、ほんとに来たんだよ。何年か住み込んで働いて、こっちの男と結婚して今でも北海道に住んでるよ。あんたもさ、何か大変なことあったら、こっちにおいでよ。」おばさんは笑って言った。

道内に入ってから思ったことだが、北海道はよそ者にとてもやさしい。ライダーハウスなんてものがきちんと機能している所もその証だと思うが、みんなよそ者にとても親身にしてくれるのだ。

そんな世間話をしていたら、さんま丼ができあがってやってきた。どんぶりの中を見て私は驚いた。さんまが生なのだ。

「え~!さんま丼ってお刺身なの?!さんまのお刺身なんて初めて見た!」

「そりゃね、うちの父ちゃんが捕ってくるさんまが新鮮だからできるんだよ。そんじょそこらのさんまじゃ生じゃ食べられないさ。刺身は苦手かい?」

「ううん、私何でも刺身が一番おいしいと思ってるよ~!」これは本当だ。私は子供の頃からお刺身が大好物なのだ。「いただきまーす!」

さんま丼は、思ったよりおいしかった。というのも、さんまは小骨が多いからもっとじゃりじゃりすると思ったけど全然そんなことなかったし、生臭いかとも思ったが、全くそんなこともなかった。プリプリの身が厚くて新鮮で、あったかいご飯とよく合ってものすごくおいしかった。私はどんぶりのご飯粒まで全部たいらげた。

「どあーっおいしかったあー!」

「そうでしょう、父ちゃんが魚を追っかけて九州からここまで来たんだから。父ちゃんの魚は最高だよ!」

「九州!おばさん九州の出身なの?!」

「そうだよ。」

「え~!じゃあ慣れるまで最初の何年かはすごい寒かったでしょ~!」

「何言ってんだい、今でも寒いよ!」

「あはは~!」日本最東端の食堂で働くのもいいかもしれない、と思わせるおばさんだ。

お金を払っていよいよ出発するとき、おばさんが「これ持って行きな。」と何かを私に差し出した。言われるまま受け取ると、プラスティックの白い棒に黄色いビニールの三角のペナント風な旗が付いている。旗には白抜きで鈴木食堂、と書いてあった。

「うちに来たライダーはみんなこれ付けて走るんだよ。」

「おばさん、細かいもの色々作ってるねえ!」

「当たり前だよ、商売だからね。宣伝だよ、宣伝。さっきの子にもあげたんだよ。」

「でも車だと外に付けたら飛んでっちゃうから、中でいい?ガラスにくっ付けとけば外から見えるし。」

「あー、いいね。じゃ、ほらこれ。」おばさんは小さい紙切れの束を出した。それは50円引き券だった。「今度はあんたが会ったライダーに配って。」

「わかった。」私はその券の束を財布の中にしまった。「じゃあね、おばさん。泊めてもらって助かりました。ストーブなかったらほんとに寒かったよ。」

「気をつけなよ。」

私はおばさんの声を背に走りだした。ここに来たライダーはみんな、さんま丼を食べ、鈴木食堂の旗を付けて走って行くのだろうか。50円引き券を持ってみんながここに来るのがわかったような気がした。とにかく走っているライダー達には、この券がなんとなく目標みたいな感じになるのだ。どこに行こうかルートをあてもなく考えている時、この券があると行ってみよう、と思う。あてがないからこそ、こんな手書きの券でも目指したくなる。そして実際に鈴木食堂にたどり着いてあのおばさんと話をすると、みんなまた他の人に券を配って「行ってみろよ」と言いたくなるのだ。たった50円の値引きはおばさんにも私たちにもそんなに大差ないはずだ。でもこの券はライダーを鈴木食堂に導くのに十分なのだ。恐るべし、50円引き券!

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カードもらった!

娘が、通っているリトミック教室のお友達にラブ&ベリのカードをもらいました。うちではまだこのカードゲームはやらせていないんです。なんかきりがなさそうだしね。始めちゃったら後が怖いなあ~・・・って。でも、お友達のママにそれを話したら「ダブってるカードはどうせ使わないから、まだ持ってないって言ってたから、良かったらあげて。」と下さいました。早速娘に見せると、ず~~~っと欲しいと言っていたので大喜び!

「ママ、これで**ちゃんもうゲームできるよ!まかせて!」まかせてなんてどこで覚えたんだろう!そんな言葉使いを聞いたことがなかったからビックリしたけどここはわざとさらっと流して・・・。

「でもね、このゲームはやるたびにお金がかかるんだよ。」

すると娘が「ママ、大丈夫!お金がなくなったら銀行に行けばいいんだよ!」

「えええええ~~~!」なんか、3歳になると途端にすごいですねえ・・・。確かに見てるとお金、ペローンって簡単に出てきますけどね。

また、私が洗面所でコンタクトをしていたら娘と息子がやってきました。娘は洗面所に入るなり、息子の鼻先でドアをバタン!と閉めてしまいました。

「**ちゃん!すぐ近くでバーンってドアを閉めたら危ないって言ってるでしょ!ぼくの指はさんじゃうよ!」

すると娘が下を向いて小さく「あのね、**ちゃんね、弟くんのこと大好きだけど、・・・でも閉めたいの。」

これはきっと娘の本音なんでしょうねえ。弟は別にかわいくないわけじゃないけど、ママといる時間を邪魔されたくないという・・・。ママは体が二つ欲しいですよ~!でも、「閉めたいの。」で笑っちゃったけど~。

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脳みそがヒマな時

ライダーの話を聞いていて、私は自分の仕事の時を思い出した。

私はこの頃イベントや展示会のナレーターや通訳をやっていた。5年やって、その間に3回モーターショウに出た。当時はモーターはまだ2年に一回の開催だった。2回目に出た時はヨーロッパ車のブースで、英語担当の受付と、その合間にターンテーブルの上に車と並んで立つことになった。背も高くないし、プロポーションも良くないので、普段はモデルの仕事はほとんどないのだが、モーターはモデリングが多いので、必然的にモデルの仕事も多くなる。私も例に漏れず受付とモデルを両方やることになったのだ。

で、やってみて思ったけど、脳みそはとってもヒマなのだー。30分とか突っ立っているのである。モーターとなるとものすごい人数なので、同じ仕事をしている友達も総動員で、みんなどこかのブースに入っている。ターンテーブルの上から「あ、あそこR子ちゃんがいるとこだ。見えるかな?」「あっちはコスチューム寒そうだなあー。あれ、あれってNちゃんだ!」なんて感じで、控え室は友達だらけでかなり楽しいことになっている。始めの頃こそあちこち見ながら立っているけど、段々それも飽きてくると、すご~くヒマなのだ。

控え室に戻ってみると、みんな同じことを言っている。

「あ~疲れた。ていうか、ヒマ~。」

「ね、Tちゃん、うちからよく見えるんだけど、一回で何分テーブルに立ってるの?」

するとTちゃんは真剣な目で訴えた。「もお~ダメ。たまには逆に回りたい~!」

Tちゃんのブースのターンテーブルはずっと回っているのだ。そりゃ気持ち悪かろう。私のブースのはモデリングの間は静止していて、モデルがテーブルから降りると回るようになっていた。車がかなり激しく動きながら回るしかけだったので、人を乗せたまま回ると危ないのだ。「ヒロコちゃんの所いいよ、回らないだけでも。」

「そうだね、大変だねえ・・・。ね、何考えて乗ってる?」

「あのね、」Mちゃんが言った。「歌いいよ、自分の好きなアーティストのメドレー歌うの。アルバム持ってるやつとかだと結構歌えるから、時間もつよ。」

「なるほど~!」

「1曲大体3~4分として10曲で30分だ!」

すると今度はYちゃんが言った。「もっといいのあるよ!ドラえもんの道具20個出すの。これがなかなか20個出てこないんだ~。」

「おお~!」

「私やってみたやつもね、難しかったよ。タイムボカンシリーズの悪役リーダーの名前言うの。」

「また出た・・・、ヒロコちゃんマニアックだよ。そんなの全く思いつかないよ。で、何人出てきたの?」

「ドロンジョとムージョ。」

そんなことを話ながら、控え室の休憩時間が過ぎていくとはカメラ小僧は知るよしもない。

ライダーが、走ってる間はすごくヒマだというのを聞いて、ふと思い出したのだ。で彼に言ってみた。

「知ってる歌つきたって言ってたじゃん?今度ドラえもんの道具ありったけ出してみるといいよ。」

「おお~!ドラえもん~?新しい案だなー。そんなの考えて走ってるの?」

「ううん、仕事中にやってたんだ。」

「し、仕事中?いいの?そんなこと考えてて。」

「いいのいいの、にっこり笑ってればね。」

「それ、なんかやばくない?」

「あれ?」そう言えば、おばさんがまだもう一人ライダーハウスに来るって言ってたのを急に思い出した。「さっきおばさん、まだ一人こっちに向かってるって言ってたよね?」

「ああ、でも来れば叩くだろうし、そしたら開ければ平気だよ。それにこの時間と雨じゃあ、あきらめてどこかで野宿してるんじゃないかな。そんなに無理して走らないよ、きっと。」

「そっか。じゃあ寝ても平気かな。」

「平気だよ。こんなプレハブ、どこ叩いたって聞こえるし、来たらわかるよ。ライダーだって、このハウス知ってて電話してきたってことは慣れてるやつだよ。」なるほど、確かにそうだ。それなら知らないうちに締め出してしまうことはないだろう。来たら開ければいいのだ。

「じゃ、安心して寝よ。」

「うん、お休み~。」

「お休み~。」

私たちは一応ストーブを一番弱火にして、寝袋に潜り込んだ。北海道に来て初めてストーブで寝るが、じんわり暖かくて気持ちいい。この日はすぐに眠りについた。

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納沙布岬とライダー情報

彼はストーブの周りに手袋やら靴下やら、色々なものを干し始めた。私は洗濯しても車の中で干して走る風で乾かしているから問題ない。でもバイクは確かに洗濯物をはたはたひらつかせて走るのは無理だから、大変だろう。思い出したように、彼が言った。

「納沙布岬はもう行った?」

「ううん、とにかくここに来なきゃと思って、どこにも寄ってないよ。」

「俺も。ちょっとさ、見に行かない?」

「えー?今?」

「そうだよ、だってすぐそこだし。」

夜の観光地もちょっとおもしろそうだなと思ったので行くことにした。

「じゃあ、行ってみよっか!」

「よし!」

2人でそのまま勢いよく外に出た。外はかなりな雨と風でもう暴風域だ。風があるから体感温度がすごく寒い。

「ぎゃあ~~~!」人間は寒いとどうも叫んでしまうのは本当だ。

「さ、寒い~~~!!!」「ぐわあ~~~!!!」「ひゃあ~~っ」バカみたいに口々に叫びながら、海が見える場所まで全速力で走った。あたりは真っ暗で、もちろん明るいコンビニなんてなくて人も自分たち以外に誰もいない。ちょっと走るとすぐ納沙布岬に出た。そこには観光用に看板があって、「日本最東端」と書いてある。

「おお~!日本最東端だー!ダメだー寒いー!」2人で笑いながら叫んだ。「帰ろう!」

ダッシュでプレハブに戻り中に入ってドアを閉めた。風と雨の音がちょっと遮断されただけですごく静かに感じた。ストーブに駆け寄って手をこすり合わせた。まだ体がブルブルしている。

「いやあ、寒かったねえ。」

「うん、でも見れたよ、岬。」

「あーおもしろかった。」寝袋にこたつみたいに足を入れるとほっとひと心地ついた。

「フェリーはどこから乗ってきたの?」彼が聞いた。

「私は、なるべく陸路で来たかったから、青森まで来て、大間フェリーに乗ったよ。」

「おお~俺も!でもさ、他の道は平気なんだけど都内がわかんなくてさ、首都高抜けるのに迷っちゃって6時間もかかったんだよ。」

「ええ~!」私はぶったまげた。6時間走ったら相当の距離を進むことができる。それを迷うことに費やしてしまったなんて!「でも確かに私も首都高とかほんとにダメで、東北自動車道に乗るまで友達にナビしてもらったんだよね。」

「いいよなあ~車は。そういうところも余裕だよなあ。バイクはさ、孤独なんだよ~。走ってる間は誰ともしゃべらないでしょ。だから、ライダーハウスに入ってから、ほんとはみんなすごい話したいんだけどまだ最初は照れとかがあって、でもそのうち誰かが耐え切れなくなって地図とか出して「どのルートで来たの?」とかって始まるともうみんなわあ~~ってしゃべり始めるんだよ。」

「そうだろうね。昼間ずっと一人で黙々と走ってるんだもんね。」

「うん、だから夜ライダーハウスでしゃべるの結構楽しみなんだよね。今日も一人じゃなくて良かったよ。」

「あ、そうか、私が来なかったらここでも一人だったんだね。じゃあ昨日ランプでどんな話してたの?」

「昨日は面白かったよ~。」彼はすっごい笑い始めた。「原チャリライダーがいてさ。」

「げ、原チャリ?!」

「そうだぜ~原付でず~っとペケペケ走ってきたんだよ。でも、一定のスピードしか出ないから、ゆっくりのんびり走って来て日が暮れたら止まる、みたいな旅で、俺ちょっとうらやましかったよ。そんな旅もいいなあって。やっぱりつい走っちゃうからさ。」

「でもさ、スピード違反とかで捕まらない?そんなに飛ばしてるわけじゃないの?私なんて函館着いた途端に切られちゃったよ。道内ってキビシイんだね。」

「ちがうよ~。」彼は笑って言った。「あそこはさ、みんなフェリー降りてやっと道内に入った~!って喜んでつい飛ばしやすいんだよね。で警察もわかってて、みんなあそこで待ってるんだよ。で、次々捕まるわけ。第一まだ街中で一本道とかじゃないから、そんなにスピードオーバーしてなかったでしょ?目立ってたわけじゃなくて待ち伏せされてるんだ。だからあそこはいつもにも増して気をつけてゆっくり走らないとダメなんだよ。」

「えーー!そうだったの?!」早く言ってよ、と突っ込みたい。これを北海道に入る前に聞きたかったー!がっくり。

「ま、洗礼だと思ってさ。みーんな切られてるから。」

「なるほどねえ~・・・。」

「ライダーハウスでそういう情報も一緒に聞くといいよ。結構役に立つよ。でもさ、話戻るけど原付よりもっとすごいのもいたぜ。」

「な、なに?」

「ママチャリライダー。」

「ぎゃははー!それはもうライダーじゃなくなってるんじゃないの?しかもスポーツ用とかじゃなくてママチャリなんだ。」

「うん、俺が会ったのは、すっげえ若いやつでさ、高校生くらいかな、朝いきなりチャリンコ乗って、そのままずっと走り続けて来ちゃったんだって。」

「そうなるともう・・・なんか違う境地だね。」

「うん、すげえよ。バイクはさ、孤独だけど、チャリンコライダーは根性だよ。全部自分だもんな。」

話を聞いて私は自分がどれだけ楽に走っているか思い知った。雨も当たらない、ヒーターも入れられる、荷物も重い思いもせず持てるしどこでも寝られる。何と言っても運転してる間はシートに座ってるだけなのだ。目とか肩とかは確かに疲れるけど、この広大な景色の北海道の中をチャリンコでひたすら走り続けるというのはどんな気持ちなんだろう・・・。便利にしたくて荷物を多く持てば自分が重い。少なければ楽だけど不便がいっぱいだ。それにちょっとした坂も車じゃ全く感じないけどかなり辛いだろう。一体一日でどれくらい進めるのかな・・・。

「いやあ、色んな人がいるねえ。」

「そうだよ、ほんとおもしろいよ。」

「ねえ、今まで走った中でどこが一番良かった?」私は大体みんなにこの質問をしていた。

「俺?やっぱり屋久島だな。あそこは全然違っててすごかったよ。あんまりバイクで走れる環境じゃないから、島の中では走ったって感じじゃないけど、感動したなあ~。」

また屋久島だ、と思った。フェリーライダーも屋久島が一番だと言っていた。そんなにいい所なんだ・・・。むくむくと、ものすごく行ってみたくなってきた。

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ランプから鈴木食堂へ

雑魚寝した後目が覚めると、久しぶりに平らに寝たせいかとてもすっきりしていた。起きて支度をしているとみんなも起きてきてわさわさし始めた。同じ部屋で寝た4人組が近所の市場で朝ごはんを食べるというので、一緒に行ってみることにした。私はそのまま出発できるように全部荷物を積んで、ティナ坊で市場へ向かう。市場はランプからすぐだった。

中には所狭しと魚介類が並べられていて、どれもすごく安い!なかでも海鮮丼というメニューは、始めに丼めしをもらい、それを持ってあちこちまわって好きな具を乗っけていくというものだった。みんなもちろんこの海鮮丼にして、それぞれ具を求めて散らばった。私も海老やらイクラやら、大好きな生ものをこれでもかと乗っけてもらった。みんなで同じテーブルで食べたが、周りを見回してみても、ライダーばっかりが食べている。ライダーは一目見てわかる。しかし、イクラがおいしい~!なんて豪華な朝ごはんだー!

羅臼

みんなと写真を撮って別れた後、私は羅臼に向かうことにした。網走から近いし、羅臼には地図で見ても温泉のマークがいっぱい書いてある。温泉がたくさんあるらしいし、聞いた話では川の途中が温泉になっていて、そのまま入れるらしいのだ。そんなあったかい川にはぜひ入ってみたい。

334号線を知床半島に向かって走って行くと羅臼の手前にオシンコシンの滝というのがある。ここに向かっていたのだが、なんだかどんどん雨がひどくなってきた。寒いし暗いし走りにくい。運転していてもやっぱり雨で疲れが倍増するのだ。オシンコシンの滝のふもとというパーキングに着いたけど、観光客の車が結構いてちょっと考えてしまった。混んでいるけど雨だし、滝まではここに車を停めて歩いて行かなければならない。結構濡れるだろうし、体力も使いそう・・・。ちょっと車の中で考えた。よし、ここはあきらめよう!そしてもっと前に進もう。地図を見て、ここから根室半島に向かうことにした。根室半島にはフェリーライダーの言ってた鈴木食堂がある。今日は鈴木食堂まで行って、そこで泊まろう。

目指せ鈴木食堂

ティナ坊をUターンさせて、根室へ向けて244号線へ。海沿いを下に下りて行く。海沿いには漁業関係の建物ばかりで、あちこちに「若者歓迎アルバイト募集中」という手書きの看板が立っている。猟師のバイトなのかなあ・・・なんて思いながら雨の中を走る。知床半島から根室半島は地図の上で見ると近くに見えてすぐに着くかと思っていたが、なかなか走り進むことができなかった。雨もあってそんなにスピードも出せないし、とにかくゆっくり進むしかない。でも天気のせいもあって暗くなるのが早くて段々心細くなってきた。どうしよう、あのライダーはたどり着きさえすれば、ライダーハウスがあるから泊まれると言っていたけど、もしやってなかったら疲れて半島の先になんか到着して寝られる場所があるかなあ・・・。考えていても仕方ないので、電話してみることにした。

「もしもし・・・」

「はい、鈴木です。」おばさんの声だ。

「あ、あのライダーハウスやってるって聞いたんですけど、今日泊まれますか?」

「今どこ?」

「え?今ですか?えっと、44号線を走ってるんですけど。」

「あのね、もう店閉める時間だから、あたしは家に帰るんだけど、それくらい近くに来てるんなら待っててあげるから早く来な。」

「ええ~!帰っちゃうんですか?そんな、あ、車なんですけど停められますか?」

「あ、車なの?ああ、停められるよ。だから待っててあげるから早くおいで。」

ぎゃ~~!私は俄然焦った。それにしても電話してよかったのだ。電話していなかったらおばさんはさっさと家に帰ってしまったにちがいない。危なかった。ライダーハウスといえども予約って大事なのね~!私は必死に走り始めた。あたりはもう真っ暗だ。

鈴木食堂

ずいぶん走ってやっと半島の突端に出た。結構さみしい所だ。一体鈴木食堂ってどこ?私はもう一度電話した。

「ああ、着いた?今ちょうどもう一人来たとこだよ。そこから右に曲がってすぐだから。」おばさんに教えてもらったとおり曲がると鈴木食堂の看板があった!戸口からおばさんが出てきた。

「ああ、着いたね。こっちに停めな。」食堂の隣に小さいプレハブがあって、そこがライダーハウスらしかった。バイクが一台停めてあって、私はその横にティナ坊を停めた。プレハブから男の子が顔を出した。

「じゃあ、あたしたちはこれで帰るからね。後、さっき電話かかってきてもう一人こっちに向かってるから、その子が来たら入れてあげてよ。朝また戻ってくるから。後、ストーブ点けてあるから、気をつけてよ。」

「え?ストーブ?そんなに寒いの?」

「いらないなら、いいんだよ、消していこうか?」おばさんは笑って言った。

「ややや、点けてってください~。」

「ははは。じゃあね、明日の朝来るから、誰か来たら入れてあげるんだよ。」

「はーい。」私は寝袋と荷物を持ってプレハブの中に入った。外は風が強くて雨も降ってて確かに寒い。とても9月なんて思えない。中はもうストーブのおかげで暖まっていて、私はため息が出た。荷物を放り出してとりあえずその場に座りこんだ。

「はあ~~~着いた~~~よかったあ~。」

するとライダーも「俺も今着いたんだ~。」と人なつっこく言った。「もう~雨だとやだよ~。いいなあ車は雨でも平気で。」

「そうだよねえ~バイクは雨大変だよねえ~・・・。」

「雨もそうだけど、ずっとひとりってのがつまんないんだよね。話す相手もいないし。車は音楽とかラジオとか聞けるじゃん。」

「それはあるね。私CDで歌いっぱなしだよ。」

「俺もさあ、ずっと頭の中で歌歌ってたんだけど、もうダメだ。知ってる歌全部歌いきってレパートリーがつきた。」

「あはは~。」話をしながら私は寝袋を広げて支度を始めた。話した感じでは彼は結構若そうだ。

「今日はどういうルートで走ってきたの?」

「あのねえ、網走のランプってライダーハウスから出発して羅臼に行って、こっちに降りてきたの。」

「えっランプ!俺も昨日ランプに泊まったよ!」

「えっ!?いた?」あ、そうか、あっちのライダーが雑魚寝してた方にいたんだ。「あ~私民宿みたいな、もう一軒のおじさんのいる方に泊まったんだ。」

「そっか、じゃあほとんど同じルートで来たんだな。あれ?もしかして、あの黒い車Uターンしたよね?俺見覚えがあるかも。」

「え・・・。」そう言われて私も思い出した。今日Uターンした時に黒い革ジャンを着たライダーとすれ違ったっけ。(ていうかライダーはみんな黒い皮系ばっかりだけど)、あれだ。お互い途中でも会っていたのだ。

「あれかー!」

「あれだー!」

「ね、ところでさ、すごい申し訳ないんだけど」彼が突然言った。「手袋干してもいい?」

「もちろんいいけど、なんで?」

「だってくさいんだよ。ずっとはめてて今日は濡れたから。」

「はははー!いいって、干しなよー!私こんなに寒いと鼻ダメで全然においわかんないから。」

「じゃあ靴下も干していいかな。」お互いゲラゲラ笑った。

「ストーブあってよかったねええ~!」

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ちょっと子供の成長記など

最近すっかり涼しくなりましたね~。涼しくなったね、と娘に話したら娘がひとこと。

「ママ、もうディズニーランドに行くしかないよ。」

確かに、行きたい行きたいと言う娘に「もうちょっと涼しくなったら行こうね。」と言っていたのよね・・・。

息子は2歩、3歩とよちよちしていたのが、昨日から急に10歩くらい歩くように!でも左右に振れながら歩く様子はちょっと紙相撲のよう・・・。最近は意思疎通もしっかりしてきて、欲しいものが手に入るまで叫び、違うものをあげると「イヤイヤ」と首を振るのでだいぶわかりやすくなりました。どんどん人間らしくなってきますねえ。

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やっぱり霧の摩周湖

摩周湖に着いた時には、すっかり暗くなっていた。ただでさえ霧の時が多くてなかなか見られないという摩周湖なのに、夜に到着してもどーすんのか・・・。もちろん、なーんにも見えない。摩周湖は山の上にあって、ずっと坂道を登って来たのだが、来る間に帰って行く観光バスと何台もすれ違った。つまり、みんなもうお帰りなのだ。そりゃそうだ。とりあえず上まで行って展望台とお土産屋さんのある所まで行ってみたが、湖なんてこれっぽっちも見えないしすごく寒い。仕方ないのでさっさと降りることにした。降りながら考えた。もう今日はすっかり暗くなってしまったから、早く寝る所を探さないと。これから道の駅を探すか、それとも・・・。道の駅で車の中で寝起きしていたけれども、朝方なんかがとても寒くて結構辛くなってきていた。寒いのでどうしても夜明けとともに起きてしまう。ゆっくり寝ていられないのだ。5時頃には起きて走り始めるので、夕方暗くなるとくたくたである。今日はもうすっかり夜だけどまだ目ぼしい道の駅に到着しているわけでもない。どんどん寝る時間が削られていくのに疲れているし・・・。

ちょっとライダーハウスに行ってみようかな・・・。

ライダーハウスがどんな所か気になっていたし、車中寝袋に変化が欲しくもなっていた。地図で確認してみると、網走がここから近くて、ライダーハウスがある。とにかく行ってみることにした。

初めてのライダーハウス

摩周湖から北上して網走に入った。今日は湿原を通って海に出たが、そこから北上して今度はまた海だ。道内を縦断したことになる。網走に入って街中の地図を見てライダーハウスを探すことにした。

国道と違って街の中は道も細かいし、場所を探すのが難しい。今までの感覚で走っているとすぐに通り過ぎてしまう。だだっ広い場所を走り抜けてばっかりだからだ。疲れた目でうろうろ探し回ってやっと、一軒ライダーハウスを見つけた。と言っても、小さな普通の民家、って感じである。ランプという名前だ。私はとりあえず車を目の前の道路に停めて、建物に近づいた。道路から少し入った所に入り口があり、入り口の手前に所狭しとバイクが何台も停めてある。ライダーはいっぱいいるみたいだ。出口の引き戸を開けて中を覗き込むと何人かのライダーが立って話をしている。

「すみませーん。」

「はい?」ライダーの一人が振り向いた。

「ここライダーハウス?ですよね?泊まりたいんですけど・・・」

「ああ、じゃあそこの角曲がった向こうにもう一軒家があって、そっちにおじさんがいるから、そのおじさんに聞いて。」

私はホッとした。「ありがとう~。」

早速教わったもう一軒の方に行ってみると、そっちはもっと大きくて、民宿のようなたたずまいだ。こちらに比べるとさっきのは一間か二間だけの離れみたいな感じである。さっきみたいに戸口から呼んでみると、松本零*先生みたいなおじさんが出てきた。

「あの、今晩泊まりたいんですけど、車なんです。停める場所とかありますか?」

「車?ああ大丈夫だよ。でもライダーの方がもういっぱいいっぱいなんだよ。あっちはもう寝る所ないから、こっちで良ければ泊めてあげられるよ。」

なるほど、さっきの離れがやっぱりライダーハウスなのだろう。確かにもういっぱいライダーがいたから無理かもしれないが、ここで泊めてもらえるならラッキーだ。

「うれしいです。じゃあこちらで泊めてもらえますか?」

「ああ、入んな。」

ランプ

おじさんはそのまま私を家の中に入れてくれた。中は畳の部屋がいくつかあって、台所があって、私にはその台所とくっついている畳の部屋で寝ていいと言ってくれた。6畳のその部屋にはテレビが置いてあって、ライダーが2人、テレビを見ている。おばさんが台所にいて、他のライダーに何か話している。私はキッチンテーブルの椅子に座ったおじさんに一泊いくらなのか値段を聞いた。

「800円でいいよ。」おじさんは言った。初めてだったのでそれが相場なのか安いのか高いのか全くわからなかったが、どう考えても家の中の畳の部屋で寝られるのに800円は安い!私はすぐ800円をおじさんに払うと、車をおじさんの指定した場所に停め直して、荷物を持って戻り、畳の部屋に座った。畳に座ってテレビを見るなんて何だかすごい久しぶりだ。すると、おじさんがすたすたとこっちに来て私に言った。

「あんた、今ちょうど空いてるからお風呂に入っちゃいな。」

「ええ~!お風呂!!」びっくりだ。「おじさん、お風呂入っていいの?お風呂もあるの?」

「いいよ、まだ入ってない野郎がいるけど今ちょうど空いてるから、みんなが入る前にさっさと入っておきなさい。」

「うれしい~!ありがとう~!」まさか、お風呂にも入れるとは思わなかったので、ものすごいうれしかった。いつも温泉を探してお風呂には毎日入っていたけれど、今日はもう遅かったしあきらめていたのだ。でもまさかここで入れるなんて。ランプに決めて目指して走ってきて良かった!毎日お風呂には入ろう!と決めていた旅だったけどここで記録が途絶えるかと思った。でもまだお風呂運はあるようだ。私は急いでお風呂場に行き、まだ入るの待ってる人がいると聞いたからなるべく早くシャンプーして、でもちょっとゆっくり湯船につからせてもらった。

「ほわあ~~~。」

もちろん、たいていのライダーハウスは自分の寝袋で寝るのが原則である。私も寝袋を畳の上に持ってきたが、私の寝袋はチャックを全部開けると一枚の四角い布団みたいに広がるので袋でも布団としてでも寝られるようになっている。私はお風呂から上がってぽかぽかして、広げた寝袋に入っていると、とても気持ち良かった。テレビを見ていたライダー達は、見ていた番組が終わると、「じゃ」と言って、あの離れに寝に戻って行った。彼らはあっちで大人数で雑魚寝だ。私もすごく眠かったので、もう寝ることにした。おじさんもおばさんも寝に、奥に行ってしまった。

「はあ~~~~。」

ごろんと横になる。久しぶりに平らに寝られる。なーんて気持ちいいんだろう~!首も背中も足もぜーんぶ平らだ!

ちょっと寝入りそうになってすぐ、話し声が聞こえて4人組が入ってきた。また誰かがライダーハウスにたどり着いて泊まりに来たのだ。おじさんが彼らに「もうそこしか残ってないから、そこでみんなで寝てよ。」と言った。私は寝袋から首を持ち上げて見た。女の子2人と白人の男の子2人だ。

「こんばんわ~。すみません、もう寝てるところ。」

「こんばんわ~。今寝たところだから、全然大丈夫。つめようか。」

いきなり、部屋に5人で寝ることになったので、私は端っこに移動した。彼らも車で、貧乏観光旅行中だと言った。2人の男の子も日本語が上手で、私たちはしばらくお互いの紹介をしながら話をした。だんだん話がおもしろくなってきて、寝られなくなってきてしまったが、寝袋に入ってみんなでしゃべっているのなんて、なんだかキャンプか修学旅行みたいだった。今までずっと一人で走ってきたけど、急に今日はたくさんの人と会って話をして、とても楽しい。

「ライダーハウスっていいかもしれない・・・。」

私はすぐにライダーハウスのファンになった。

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湿原ドライブ

ナビントッシュの車はジープみたいなアウトドアな車で、確かにファミリアよりはダートに向いていそうだった。まず近所の”商店”という感じの何でも屋さんでお昼用のパンを買った。そして車に乗って出発!ずっと真下に下りて釧路湿原を通って海まで出る。走っている間に色々話をした。彼はもともと横浜出身で、今はご両親が引っ越してあの表札を作っていたお店をやっていること。私も実家は違うが、横浜から走ってきたことなんかを話した。

「ええ~!横浜、僕**駅だったんだよ。住んでたの。」

「**駅!私@@駅だから、隣の隣じゃん!!**駅って駅前に大きい本屋あるよね?!」

「ああ~あるある!」

よくある、出てきた場所が近いと始まるローカルトークですっかり盛り上がった。

まわりの景色は本当に緑が濃くてすばらしかった。天気も段々良くなってきて、少しずつ明るくなってきている。湿原の水の部分が光を反射する独特の景色はちょっとフロリダを思い出す。でも空気がひんやりしててさわやかで、あのもわあ~っと蒸し暑いフロリダとは同じ湿原なのに雰囲気が全く違う。そういえばフロリダの湿原ではワニがいたっけ。北海道の湿原には何が住んでいるんだろう。

すごく遠い気がしていたけど、そんなに長く感じない間に海に着いた。がらーんと何もない所で、海岸の手前に無造作に車を停めて砂浜に下りた。砂浜はいつも私が行く湘南とは違って狭い。でも、砂が白くて、海の色もきれいだ。私たちはバラバラに砂浜で拾った物を一箇所に集めて並べて吟味した。ナビントッシュが言うように、流木はたくさん落ちていた。その中からより乾いていそうでおもしろい形のものをたくさん拾った。それを一直線に並べて写真を撮り、それからその中の半分くらいを持って帰ることにした。ずっとひとりで走っていたので、こうやって誰かがガイドしてくれて走るのは新鮮だった。

アイヌコタンに戻ったのはもう夕方だった。

「あのね、木の色も、硬さややわらかさも、えんじゅの木が一番いいんだ。」そう言ってナビントッシュはビニール袋に何個もえんじゅの木の木片を入れて「これで彫ってみて。」と言って私にくれた。お土産屋さんにお土産をもらってしまった。ただ四角に切ってあるものから、丸くカットしてあるのまで、4~5個もある。私はお礼に彼が一番最初に作ったへたくそなアイヌのおじいさんのキーホルダーを買うことにした。

「それじゃね、どうもありがとう。木彫り、がんばってね。」

「うん、そっちも気をつけて。表札ができて実家に届けに行ったら、横浜に遊びに行くよ。」

「わかった。じゃあまたね!」

停めっ放しになっていたティナ坊に戻ってアイヌコタンから出発した。次は摩周湖に行くことにもう決めていた。朝からオンネトー湖、阿寒湖ときたので、次は摩周湖に行って、今日は湖シリーズだ。摩周岳、アイヌ語でカムイヌプリ、神の山に向かった。摩周湖は神の山にある。

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ナビントッシュ

彼は「一人で来たの?」とか、「どこから来たの?」とか、絶対聞かれる質問ベスト3を聞かなかった。慣れているのだと思った。もしくは同類っぽい。

「木彫り、どう?」

「うん、私絵を描いてるから興味あるよ。でも彫刻はできないんだ。」

「なんでできないの?」

「だってさ、彫刻って削っちゃったらおしまいでしょ。そういう一発勝負系苦手なんだよね。」

「いや、ちょっとずつ削っていけばいいから、平気だよ。まあ、とりかえしがつかない場合もあるけどね。」

「だよねえ。」

彼は彫っている手を止めて、すぐ横に置いてあった小さな籐の箱を私に見せた。中には黒い木で彫ってある木彫りのアイヌのおじいさんのキーホルダーがいっぱい入っていた。

「僕もね、教わってるんだ。ここに住み込んでここの店のおじさんに木彫りを習ってるんだけどね、まだまだなんだよね。えっと、これ。」そう言って彼はひとつ、木彫りのおじいさんを取り出した。「これは僕が教わってるこの店のおじさんが彫ったやつなんだ。で、これが。」そう言って、また別の木彫りのおじいさんを箱からつまみ上げた。「これは僕が一番最初に彫ったやつなんだ。もうすっごいへたくそで汚い。見るとすごい嫌だよ。」

私は両方の木彫りのおじいさんを手のひらに乗せてじっくり見てみた。確かに、彼が作った方が文字通り荒削りである。

「なるほど・・・。でもこれ、ちっちゃいから特に大変そうだよ?」

「うん、だから合間にこういのも作ってるんだ。」そう言って今まさに彫っていた木を見せてくれた。こっちはもっと大きくて、白い木片だ。一番上に「風」と途中まで彫ってある。

「これはさ、お土産じゃなくて、母親が店をやってるんで、それの表札にどうかと思って店の名前を彫ってるんだ。できたら実家に渡しに行こうかなと思って。」

じっくり手に取ってみさせてもらったけど、とても綺麗に風という字が彫られている。

「これは活字を拡大してトレースしたの?」

「ううん、下書きはトレースとかしないで自分で鉛筆で書いてるんだ。」

「へえ~!すごいね!」ほんとにすごい。すごく上手だ。

それからひとしきり彼は彫り方や彫刻刀の選び方や、彫った後沈むまで水から煮ることなんかを説明してくれた。

「住み込みって、ここにずっと住んでるの?」

「うん、2階にね、部屋があってそこを借りてるんだ。でも夏だけだけどね。冬はここ閉めちゃうから。寒すぎて観光客もそんなに来ないしね。」

「じゃあ冬はどうしてるの?」

「冬はスキー場に言って仕事するんだ。いくらでも仕事あるからね。道内のでもいいし、本州まで降りて長野とか行けばバイト料がいいんだ。スキー場でも住み込みだからそんなに使わないし、結構貯金できる。今もその時貯めたお金でやってけてるんだ。」

「はあ~なるほど。」確かに、雪が降ったら全く違う世界になる所なのだ。仕事や生活ががらっと変わるのは当たり前だ。でも雪国に住んだことがないので実感したことがなかった。

「ところで、何で来てるの?バイク?には見えないけど。」

「あ、車。ここ来るまでに初めてダート通って来て、すごい楽しかったよ。」

「じゃあさ、僕午後から出られるから、僕の車で湿原通って海まで行こうか?いつも流木を拾いに行く所があるんだ。良いダートルート、あるよ。ここのパーキングにそのまま車停めておいて平気だから。」

「ほんと?おもしろそうだね、行く!」

「じゃあ、12時にもう一回ここ来て。僕、ナビントッシュ。」

「私ヒロコ。じゃ、12時ね。」私はそれまで、他のお店を見ながら時間をつぶすことにした。

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ダートと鹿

早朝、日が昇ったと同時に目が覚めた。車で寝ていると必ず日の出とともに目が覚める。まあ暗くなったら止まって寝るようにしているからそれもあるが、もうひとつの理由は、かなり寒い!のだ。日の出前の一番寒い時に目がほとんど覚めてしまい、明るくなってもう寝られなくなるのだ。鼻をぐしゅぐしゅさせながら、それでも高い良い方の寝袋を買ってよかったな、と思った。安い方だったらもっと寒かったにちがいない!また昨日の夜行ったコンビニまで戻って温かいお茶とおにぎりを買い、どこに行こうか地図を広げる。

まず、士幌から241号線で右上へ、阿寒湖に行ってみることにした。士幌の町は案外すぐに抜けてしまい、山道になる。足寄国道という山の中の241号線を走る。朝だし、山だし、自分が走っている音だけで、とても静かだ。

初ダート

ふと、道沿いにオンネトー湖という看板が出ていた。なにせものすごい朝早く起きてそのまま出発してきているので、まだまだ時間がある。このままだと阿寒湖にもすぐ着いてしまいそうだし、ちょっと寄ってみることにした。看板の案内に従って241号線からちょっと右折する。一層細い道になり、そこをしばらく走っていくと、途中からダートになった。地図ではこのダートが終わった所に湖がある。5kg続くこのダートが、私にはすごくおもしろかった。なんだかこう、走ってるー!って感じがする。もちろんスピードはそんなに出せないけど、ガタガタ揺れながら山の中を走るのは爽快だ。

すると、ダートの向こうに脇から鹿がピョンと出てきて道の真ん中に立ち止まった。私はあわててブレーキを踏んだ。まだ結構離れているけれど、止まっているのにこしたことはない。どこかの道の駅のパンフレットに、道で動物に会ったら、脅かさないように止まってエンジンを切りましょう、と書いてあったのを思い出してエンジンを切った。途端にあたりがシーン・・・となった。ものすごい静かで、私は開けたままの窓から立ち止っている鹿を眺めた。鹿もこっちをずーっと見ている。私はちっとも急いでいない。鹿が通りすぎるなり、そのままいるなり、待つことにした。何分くらい待ったのか、動かず私を凝視していた鹿が「コイツ、平気かな?」と思ったかどうかはわからないけれど、自分が出てきた方に首を向けた。すると、そこから小さな子鹿がヒョコヒョコと出てきたのだ!思わずわあ~!と言いたくなるのをぐっとこらえた。なるほど、親子だったのだ。道を渡ろうとしたらこんな朝早くに走ってる酔狂な車がいたのでじっと様子を見ていたのだ。その親子鹿はすぐに向こう側の森に入って行って、見えなくなった。少しして私はエンジンをかけてまた走り出した。

オンネトー湖

ダートを抜けたらすぐに湖だった。湖の周りにはもうすでに2台くらい車が停めてある。早起きなのは私だけではないらしい。私も小さなパーキングに車を停めて外に出た。空気がとても冷たい。湖のふちまで降りて行ってみると、水の色が嘘みたいに鮮やかで青と言うかエメラルドグリーンというか、何か絵の具を混ぜたみたいな色だった。そこに周りの木々と山とが写ってとても不思議な景色だ。私は大きな石を見つけてその上に座ってしばらく景色を眺めて空気を吸った。向こう側には男の人がいる。さっきのパーキングの車の人だろうか。向こうも一人旅みたいだ。これが都内だったら怖いのかもしれないけど、北海道ではわりと怖くないのも不思議だ。しばらく景色と色を堪能した後、私は車に戻って阿寒湖に向けて出発した。

アイヌコタン

オンネトー湖から阿寒湖まではそんなに遠くなかった。阿寒湖畔にあるアイヌコタンのパーキングに車を停めた。アイヌコタンは最初から見てみたかった場所のひとつだ。両脇にずらっと民芸品店が並んでいる。今日は曇りでちょっと霧雨が降ってきていて、暗くて寒い。いつもはただ走っているけど、こういう日はこんなお店をゆっくり見てみるのがいいかもしれない。

一軒ずつお店に入り、お店のおばちゃんと話をしたりしながらまた次の店に入る。パーキングは上の方で、階段の両側に店が並び、そこを降りながら行くと湖に出るようになっていた。店に入っては階段を降りて、また店に入る。買い物なんて、コンビニで食べ物と飲み物くらいだったから、こういうかわいいものや綺麗なものを見るだけで楽しい。掲示板には「アイヌシンガー 北海ピリカ ライブ」というポスターが貼ってある。確かピリカというのはアイヌ語で「美しい」という意味だったな、なんて思いながら大きな熊の剥製が立っているお土産屋さんに入った。中で木彫りのお土産を見ていると、店番のお兄さんが「買ったお土産に、すぐに名前を彫って入れられますよ。」と言ってくれた。ふうん、そんなサービスがあるんだ、と思いながら見ると、そのお兄さんは自分でせっせと木を彫って何かを作っている最中だった。店番をしながら実際にお土産を彫って作ってるんだ・・・。すっかり作業台として道具と木片が置いてあるそのカウンターと、一所懸命彫っているお兄さんをちょっと見せてもらうことにした。私は高校生の頃、美大受験のために美術の予備校に通っていたので、やっぱり好きで気になってしまう。足を止めて見ている私に気づいて、彼は手を止めた。「こういうの興味ある?」

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Aちゃんとランデブー

早朝に目が覚め、出発の準備を整えてから、Aちゃんの携帯に電話してみた。今日も良い天気になりそうだ。

「Aちゃん?おはよう~!今、どのへんにいるの?」

「こっちは自転車だから全然進んでないよ~。同じ、兜沼の近く。これから沼から出発してまた北上して走るよ。ヒロコちゃんはどこまで来た?」

「私はね、羽幌だから、きっとすぐ追いつくな。車だからさ、あっと言う間だよ。じゃあ232号線から、40号線になる所の兜沼に行く細い道に入ってみるね。私は黒のファミリアだから。」

「OK、楽しみにしてるよ~!」

地図で見てみるとちっちゃい水色の丸に兜沼と書いてある。今までの調子で走ったら、きっとすぐ着くはずだ。青空が広がって気持ちよい空気の朝日の中、出発した。

232号線から行き過ぎないように気をつけて、沼へ降りる細い道に曲がる。ほんとにこの道で大丈夫かな・・・でもこのひろ~い景色の他に別の道はないから、合っているよね・・・。そんなことを思いながら今までの長い一直線の道とは正反対の細いぐにゃぐにゃした下り坂を降りて行くと・・・。

「あ~~~!!!いたーーー!!!」

自転車を必死にこいで坂を上ってくる2人組がいた。Aちゃんと彼氏だ!私は慌ててブレーキを踏んだ。全開の窓から叫ぶ。

「Aちゃーん!」

「おお~!早いね~!」

こんな北海道のだだっ広い景色の中で、横浜の友達に道端で会うというのは、やってみるとかなり感動するものだった。Aちゃんの彼とは初対面だというのに、そんなのおかまいなしにすっかりはしゃいでしまった。

「いやあ~Aちゃん、お互いはるばる来たね!すごい装備できちんと走ってるんだね。」Aちゃんはいかにもスポーツサイクリングといういでたちだ。もう、どこまでも走れそう。

「でも、自転車はきついよ~。いくら走っても景色が変わらないんだよね。せっかく彼と旅行なのに、なんで私こんなに必死に走ってんのかな~とかさ。しかも前をガンガン走る彼に結構ついて行けちゃう自分がヤダ。」

「ついて行けちゃうんだ~。すごい・・・。」彼も確かに、アウトドアがいかにも好きそうな、マッチョな好青年である。「できるんだもん、こういうデートもいいんじゃないの?」

ひとしきり感動し合った後は2人で彼に写真を撮ってもらった。

「この後ヒロコちゃんはどう走るの?私たちは納沙布岬まで行って、そこから礼文島に行くんだけど。一緒に行かない?」

「レブン島?どこそれ?」

「地図貸して・・・ほら、これ。」

なるほど、納沙布の左側、利尻島の上に利尻より小さい島があった。

「これレブンって読むんだ。」ちょっと行ってみたい気もしたけど、せっかく2人のデートにくっついて行くのも何だか悪い気もした。それにフェリーで行くとなると意外に時間を取りそうだし。それよりは、もっとどんどん走って行きたい。

「ううん、私は宗谷の方に行くよ。できるだけ道内を進みたいから。」

「あと何日あるの?」

「え~と20日には帰ってたいから、あと6日だね。」

「わかった。じゃあ、また帰ってから飲もうね。」

「そうだね、じゃあ気をつけてね!」

結局一緒にいたのはそんなに長い時間ではなかったけど、こうやって北海道の道端で会った、というのが何だかとても楽しかった。「じゃあね~!バイバイ~!!」私が手を振りながら走り始めると、二人はミラーの中ですぐに小さくなっていった。

日本の最北端

40号線を稚内港まで北上し、海に突き当たった所で238号線に乗って走ると、すぐに宗谷岬に着いた。日本の最北端と書いたモニュメントが建っていて、広場になっている。車を停めてせっかくだからそこでちょっと観光っぽく見物してみることにした。写真を撮りたかったけど、一人なので自分の写真が撮れない。他の人に頼もうかな~とも思ったけど、「写真撮ってくださ~い」と頼んで自分一人だけで撮ってもらう、っていう図を思い浮かべるとちょっとさみしい感じがしたので、景色だけ撮った。まあ、結構女一人旅をしてきているけど、大体こいつアブナいな・・・と怖がられることが多いのですね。

宗谷岬でお土産やさんなんかも見てみたけど、さすが最北端というだけあってすごく寒かったし(しつこいようだけど、9月!)天気も曇ってきたので、車に戻って出発することにした。Aちゃんは今頃礼文島に行くフェリーに乗ってるかな~なんて考えながら、海に沿ってず~~っと238号線を紋別まで走った。紋別まで降りて、ふとこのまま海沿いばかりを走っていても北海道の広さが見られないかも、と思い、突然そこから真下に下りることにした。273号線という道内を縦に走る道に乗って一気に走った。海の景色だったのが、どんどん山や平原の中の広大な景色になった。もう気持ちもすかーっとしてとってもすがすがしくすばらしかった。気がつくと士幌まで降りてきていた。かなり距離を走ったはずで、暗くなると同時にどっと疲れがきた。すっごく寒かったので、士幌の交差点のコンビ二でおでんを買って車の中で食べた。このおでんがあったかくっておいしー!コンビニのおでんをこんなにおいしく思ったのは初めてだった。それから道の駅まで少し走って、まさに力尽きる、という感じでばったり寝てしまった。羽幌から宗谷岬を通って紋別まで行ってそこから士幌まで・・・考えてみるととにかく前進前進の日だった。全然、急ぐ旅じゃないんだけど。

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祝!画像成功!

Img_0209 どうして今までできなかったのかしら・・・ってくらいに簡単に写真が添付できました~!よかったよかった!しかしなんであんなに苦労してできなかったのかな???だってやり方は同じなんですよ~・・・。でもまたもや一度PCの調子が悪くて中をきれいにしたので、今まで入っていた写真は入れなおさなければならないので、今日はとりあえずこの一枚。

お祭りに行くためにゆかたとじんべえを着た子供達です。息子が希望たっぷり(?)に天をあおいでいるのか、それとも予告ホームランか?息子は先週から2歩、3歩、と歩くようになってきました。昨日が記録で5歩くらいですかね。娘はタッタカ歩いていたので、男の子ってのんびりしてるんだなあ~と思います。

そんな娘は先日「パパは英語上手だね。」と言って、パパをがっくりさせていました。「英語だけ?日本語は?」って、もう娘の方が日本語上手なんだもんね。

話かわって、私の同級生の娘ちゃんが、自営業をやっているうちを見て一言、「ママ、大きな表札だねー!」えっと、あれは看板です・・・・・・。

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寝袋と留萌のプロペラ

朝起きてみるとすごいいい天気だった。さて、まず地図を見てなんとなく今日のルートを決めよう。今は岩内にいて、まずAちゃんがいる間に北上したいから、積丹半島は回らずに、ショートカットして5号線に出て、337号線を抜けて231号線を北上することに決めた。でも、その前に買っておきたいものがあった。それは、寝袋!もう明け方が寒くてびっくりしたのだ。毛布がカビているのなら、これはもう寝袋を買うしかない。

道の駅からちょっと町に出ると、すぐに交番があったので飛び込んだ。

「あのう、このへんで寝袋が買えるようなお店ありませんか?」

「寝袋ねえ、ちょうどこの道まっすぐ行くとホームセンターがあるからそこで売ってるけど・・・。もうシーズン終わりだからないかもしれないよ。」

ラッキーなことにほんとにまっすぐ行くとすぐに大きなホームセンターがあった。そしてもっとラッキーなことには、シーズン終わりのセールで寝袋が安くなっていたのだ。でも残りは少なくてたったの二個。安いのと、まあまあ高めのだ。私は迷わず高い方にした。アメリカでキャンプした時、色んな寝袋を使ったが、安いのは大体薄いから寒くて体も痛くなって結局寝不足になるのだ。こういうものをケチってはいけない。

寝袋をゲットしてすっかり完璧装備になり、やっと本格的に走り始めた。岩内から小樽を通って石狩へ抜ける。音楽は道内に入ってからもっぱらスピッツだ。スピッツの「ハチミツ」というCDが北海道にぴったりでエンドレスでかけていた。中でも「歩き出せ、クローバー」という歌が、一番ボーカルの声の透明さがぶわぁ~っと空に抜けていくような爽快感があって、この日の青空と広い緑にぴったりだった。窓全開でスピッツを聞きながら走るこの気持ちよさ!今まで走ったどの場所とも違う。

どんどん走っているつもりだが、石狩から留萌へ行く間に段々日が暮れてきた。北海道だし、距離的にはかなりあるんだから、当然だ。もうスピードチケットはもらいたくないし、行ける所まで行けばいいや。そう思いながら留萌に入った頃にはすっかり暗くなっていた。しばらく走っていると、自分の右側の丘の上にプロペラが見えてきた。何基も何基も連なって丘の上に立って回っている。四国でも風力発電のプロペラは見たけれど、こんなにいっぱい並んでいるのは初めて見た。暗い中に白い大きなプロペラが並んでとても幻想的でため息が出た。写真を撮りたくなって、ちょっとスペースのあいている所を見つけて車を停めた。

ゴウン・・・ゴウン・・・ゴウン・・・ゴウン・・・

降りるとプロペラの回る音だけが静かに響いていて不思議な感じがした。海からの風が強くて、自分も飛ばされそうな錯覚がする。私は何枚か写真を撮ってしばらく眺めてから、車に戻って走り始めた。もう、次に道の駅が出てきたらそこで寝よう、と決めた。今日は十分走ったし、最後にいいもの見たしね。

ちょうど留萌を抜けて羽幌になった所に道の駅があったので、そこで寝ることにした。今日買った寝袋は、チャックを全部開けると布団のように一枚になるデザインで、もちろん袋のようにも使えて中々の優れものだった。寝袋に入って助手席を倒したら、すっごく寝心地が良い!フワフワであったかくて、昨日までのあの寝心地の悪さがアホらしく思えた。もっと早く寝袋を買えば良かった・・・そう思いながら気持ち良く寝た。明日は兜沼まで行けるだろう。Aちゃんに追いつくはずだ。Aちゃんは自転車だから、まだそう遠くへは行っていまい(笑)。

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道内スタート!

函館港を出た時にはすっかり暗くなっていた。でも、まだ寝るにはちょっと早いから、とりあえず海岸線まで出てしまおう、と思って走りだした。街中にはあんまり道の駅はないし。函館の町を抜けてしまおう。そう思って走り始めた瞬間、後ろからパトカーがライトを付けて近づいてきて、私に止まるように促してきたので、慌ててはじっこに寄せて止まった。

「ええ~~~!!!なになに!私何したの???」

答えは簡単、スピード違反で止められたのだ。でも、ほんとに港から走り始めたばっかりで、そんなにスピードは出していない。オーバーしたとしても制限速度からちょっとのはずだった。でも、もちろん違反は違反。何よりもショックだったのは、日本でスピードチケットを切られたのが初めてだったことだ(アメリカでは2回あります。スミマセン)。北海道に入って早々、がっくりきてしまった。でも、仕方ないので、きちんと済ませて、やっとまた走りだした。もうこういうのはナシにしよう~とゆっくりゆっくり。

海岸線へ

さて、気を取り直して海岸へと進むことにした。四国の時と同じように、まずは海岸線を北上してみようと思っていた。大きな道路に出て行ける所まで北上。でももう函館ですでに暗くなっていたので、あまり無理して進みたくはなかった。何しろ、函館を出てしまうと結構暗いのである。岩内という所で道の駅があったので、そこで今日は寝ることにした。道の駅と言っても、トイレがあるだけで、後は片方が山、片方が海で何もない。でも新しいらしくてトイレはとてもきれいだし、パーキングは明るい。他に停まっている車はいなかったので、ティナ坊だけをぽつんと停めた。

停めてまず、Aちゃんの携帯に電話した。Aちゃんは彼氏と北海道に来ているはずだ。私ももし行けたら会いたいね、と言っていたのだ。

「もしもし、Aちゃん?やっぱり来ちゃった~私も北海道に入ったよ!今ね、岩内って道の駅にいるの。」

「え~!ほんとに一人で来たんだ!すごいね!私たち今、兜沼ってところにいるんだよ。」Aちゃんは彼氏と自転車を持って飛行機で来て、こっちでサイクリングデートをしているのだ。つまり、彼氏と二人で北海道をちゃりんこで走っているのである。

「今日はここでキャンプして、明日また走るよ。」

「私も明日海岸線を北上するから、じゃあすぐ追いつくよ。明日、また電話するね。絶対走ってる途中で会えるね!」

「いや~!それってすごいね。じゃあ明日ね!」

向こうは自転車、こっちは車、追い越してしまわないように見つけよう。なんだかすっごく楽しみでわくわくする。

電話をした後、トイレでいつものように寝る支度をすませたが、ビックリするほど寒い。昨日の岩手山も寒かったが、寒さの輪郭が全然ちがう。もう、こうピリッとしていて、関東じゃこれって初冬?ってな感じである。車に戻って、さすがに持ってきた毛布を出すことにした。まさかこんなに早く使うとは思わなかったけど、やっぱり持って来て正解だったのだ。私は毛布にくるまって助手席に落ち着き、寝ることにした。

またパトカー

ごほっごほっゼーごほっ。なんか、咳が出る。疲れていたし、すぐに寝るつもりだったのに、息苦しくて寝られない。おかしいなあ・・・なんでかな・・・。眠いのでぼんやり思っていただけだったが、苦しくて段々目が覚めてきた。「ん?これはもしかして・・・」私はばっと飛び起きた。もしかして、この毛布?!もちろん、毛布は冬に使っていたのを押入れにしまってあって、それを久しぶりに出して持って来たのだ。もしや、これってカビが生えているんじゃ・・・。そう考え始めると、確かにカビくさい気がしてきた。私はぜんそく持ちなので、カビとか滅法弱いのだ。すぐにゼーゼーする。

「ぎゃ~~~!」

そうと分かったらこんなカビ毛布にくるまっているのが急に恐ろしくなり、私は慌ててドアを開けて外で毛布をぐるぐるに丸めると、入れてきたゴミ用の大きなビニール袋にねじ込んだ。その袋をトランクに入れ、窓を全部開けて車の中の空気を入れ替え、深呼吸をした。う~ん毛布がダメか・・・少々寒いけど仕方がない。あきらめてまた寝ることにした。それに早く寝ないと明日が辛い。助手席に横になってまた少したってウトウトし始めた頃・・・今度はライトが近づいてきた。道の駅だから他の車が停めに来たのかな、と思って一応窓の隙間から除いてみたらパトカーだった。なんだ、警察なら変なやつじゃないからいいや、と思って寝ようとすると、パトカーが停まってドアを開ける音が聞こえ、懐中電灯の明かりがこちらに近づいてくる。「え~なんだろう・・・。」ぼんやり思っていると警官がコンコンとティナ坊のドアをノックした。

「はい?なんですか?」私はドアを開けて不機嫌に聞いた。なんと言っても、眠いのだ。

「きみ、**ナンバーだけど、一体どこから来たの?」

「横浜です。」

「横浜!どうして?」

「どうしてって、北海道を走ってみたくて来たんですけど。」おかしいなあ、今日のライダーの話では道内を走っている人は結構いるみたいだけど。関東のナンバーが珍しいんだろうか。

「なんでこんなとこで寝てるの?」

「だから、北海道を走りたくて来て、夜になったから寝てるんです。道内は道の駅で寝ちゃいけないんですか?」

すると警官が言った。「いや、もちろん寝てもいいんだけど・・・きみ、家出じゃないよね?」

なるほど、それでわかった。私は家出娘と思われているのだ!それまでせっかく寝ようとして邪魔されたと思って頭にきていたのだが、突然おかしくなって噴出してしまった。確かに、よれよれのパーカーを着てジーンズにスニーカー、すっぴんの私はひどいかもしれない。

「あ~家出!いやあ家出じゃないですよ~。私これでも31だし一人暮らししてるし、そしたらもう家出じゃなくて夜逃げですね!あはは~免許見せましょうか?」

「あ~、いやいや、いいんだけどね、きみの車、不審なんだよね。多分これからもこうやって寝てたら聞かれると思うよ。もういいよ、寝てるところ、ごめんね。」警官はそう言ってパトカーに戻って行った。私の言い方で嘘ではないと思ったのだろう。まああれで嘘だったらかなりの女優だと言えるかもしれない。それくらい、私は結構ウケていた。だって家出!そんなわけないじゃん!最後に笑って結構ほのぼのした気分でやっと寝ることができた。それにしても不審とは失礼だなぁ・・・とか思いながら。

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