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これがさんま丼!

朝、私もライダーも同じくらいに起きてゴソゴソ支度を始めた。支度と言っても荷物をそれぞれの乗り物に積んで片付けるくらいだ。するとちょっとして昨日のおばさんとおじさんが車でやってきた。

「おはよう、昨日はあれから誰か来た?」

「ううん、誰も来なかったんです。」

「そう、じゃどっかで寝たのかな。」おばさん達も食堂を開けて準備を始めた。

「ねえ、ここのさんま丼って知ってる?」私はライダーに聞いてみた。

「おう、俺昨日ここに着いた時、夜ご飯に食べたよ。」

「えっそうなの?おいしかった?」

「うまかったよー!俺さ、旅の間は一日に一回だけうまいもん食っていいって自分に決めてるんだ。でも昨日は朝ランプの近くの市場で豪華に食っちゃって、なのに夜もさんま丼食っちゃったんだよね。だから今日の分がもうないんだ~。でもさ、ここでしか食えないと思ったから食べちゃったんだよ。」

「あー私もそこの市場で朝ごはん食べたよ!わかる!私も毎回良いごはん食べられないからさ、一回豪華に何か食べたら次はコンビニでおでん、とかにしてるよ。」

「だよなあ。ガソリン代なくなったら一番困るしなあ。」

「うん、車はおにぎりじゃ走らないからねえ。」私は考えていた。どうしてもさんま丼を食べたいけど、出発することを考えると今、朝ごはんにさんま丼を食べるしかないのだ。でも朝からまたどんぶりメシというのも・・・いや、べつにかまわないんだけど。

「じゃあ、準備できたし、俺行くわ。」ライダーは食堂に顔を出しておばさんとおじさんに挨拶をすると、メットをかぶって「じゃーねー!」と走って行った。私は全部準備を終えてから、食堂に入った。

「おばさん、さんま丼って今食べられます?」とりあえず朝から可能なのかどうか聞いてみた。

「さんま丼?大丈夫だよ。食べたいの?」

「思いっきり朝ですけどね・・・でも食べたいんですよ~。おいしいってライダーにも聞いて来たし、これももらったんです。」私はフェリーライダーにもらった、この鈴木食堂の50円引き券を出した。

「あ、これ持ってるの。そうだよ、せっかくだから、食べていきなよ。今作ってあげるからさ。これで50円引きになるし。」

よし、私も決めた。朝から豪華だけどさんま丼食べよう!「って、50円引きってもとはいくらなんですか?」

「800円だよ。ところで、あんたはどこから来たの?」

「横浜です。」

「実家も?」

「いえ、実家は**なんです。」

「え~実家も横浜から近いじゃないの。じゃあ@@の近くだね。」

「あ、そうです、ご存知なんですか?」

「前にね、@@から来た女の子がこっちに住みたいって言うから、じゃうちで働けばって言ったら、ほんとに来たんだよ。何年か住み込んで働いて、こっちの男と結婚して今でも北海道に住んでるよ。あんたもさ、何か大変なことあったら、こっちにおいでよ。」おばさんは笑って言った。

道内に入ってから思ったことだが、北海道はよそ者にとてもやさしい。ライダーハウスなんてものがきちんと機能している所もその証だと思うが、みんなよそ者にとても親身にしてくれるのだ。

そんな世間話をしていたら、さんま丼ができあがってやってきた。どんぶりの中を見て私は驚いた。さんまが生なのだ。

「え~!さんま丼ってお刺身なの?!さんまのお刺身なんて初めて見た!」

「そりゃね、うちの父ちゃんが捕ってくるさんまが新鮮だからできるんだよ。そんじょそこらのさんまじゃ生じゃ食べられないさ。刺身は苦手かい?」

「ううん、私何でも刺身が一番おいしいと思ってるよ~!」これは本当だ。私は子供の頃からお刺身が大好物なのだ。「いただきまーす!」

さんま丼は、思ったよりおいしかった。というのも、さんまは小骨が多いからもっとじゃりじゃりすると思ったけど全然そんなことなかったし、生臭いかとも思ったが、全くそんなこともなかった。プリプリの身が厚くて新鮮で、あったかいご飯とよく合ってものすごくおいしかった。私はどんぶりのご飯粒まで全部たいらげた。

「どあーっおいしかったあー!」

「そうでしょう、父ちゃんが魚を追っかけて九州からここまで来たんだから。父ちゃんの魚は最高だよ!」

「九州!おばさん九州の出身なの?!」

「そうだよ。」

「え~!じゃあ慣れるまで最初の何年かはすごい寒かったでしょ~!」

「何言ってんだい、今でも寒いよ!」

「あはは~!」日本最東端の食堂で働くのもいいかもしれない、と思わせるおばさんだ。

お金を払っていよいよ出発するとき、おばさんが「これ持って行きな。」と何かを私に差し出した。言われるまま受け取ると、プラスティックの白い棒に黄色いビニールの三角のペナント風な旗が付いている。旗には白抜きで鈴木食堂、と書いてあった。

「うちに来たライダーはみんなこれ付けて走るんだよ。」

「おばさん、細かいもの色々作ってるねえ!」

「当たり前だよ、商売だからね。宣伝だよ、宣伝。さっきの子にもあげたんだよ。」

「でも車だと外に付けたら飛んでっちゃうから、中でいい?ガラスにくっ付けとけば外から見えるし。」

「あー、いいね。じゃ、ほらこれ。」おばさんは小さい紙切れの束を出した。それは50円引き券だった。「今度はあんたが会ったライダーに配って。」

「わかった。」私はその券の束を財布の中にしまった。「じゃあね、おばさん。泊めてもらって助かりました。ストーブなかったらほんとに寒かったよ。」

「気をつけなよ。」

私はおばさんの声を背に走りだした。ここに来たライダーはみんな、さんま丼を食べ、鈴木食堂の旗を付けて走って行くのだろうか。50円引き券を持ってみんながここに来るのがわかったような気がした。とにかく走っているライダー達には、この券がなんとなく目標みたいな感じになるのだ。どこに行こうかルートをあてもなく考えている時、この券があると行ってみよう、と思う。あてがないからこそ、こんな手書きの券でも目指したくなる。そして実際に鈴木食堂にたどり着いてあのおばさんと話をすると、みんなまた他の人に券を配って「行ってみろよ」と言いたくなるのだ。たった50円の値引きはおばさんにも私たちにもそんなに大差ないはずだ。でもこの券はライダーを鈴木食堂に導くのに十分なのだ。恐るべし、50円引き券!

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「旅~北海道編~」カテゴリの記事

コメント

鈴木食堂だけではピンとこなかったけど、このさんま丼、テレブで見たことある気がする!!!
・・・記憶違いかもしれないけどね。
でも秋刀魚のお刺身のどんぶりってなかなかないよね~。
何だか素敵なお店だね。私も行ってみたくなっちゃったわ。あ(笑)

投稿: Naomi | 2006年9月29日 (金) 20時57分

このブログで北海道編を書くのに、記憶と合わせるために北海道の地図で、ライダーハウスとかも載ってるやつを買ったのね。でも、その新しい地図に鈴木食堂ないんだよね。場所は日本最東端の納沙布岬でほんとに間違えようがないから、おばちゃんライダーハウスやめちゃったのかなあ・・・ってちょっとさみしいです。網走のランプもなかったし。でも宝来はまだあったのよ!
さんま丼はさんまの刺身のどんぶりを私もテレビで見たことあるよ!鈴木食堂じゃなかったけど。おいしいよ~ぅ♪

投稿: ヒロコ | 2006年9月30日 (土) 00時41分

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