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青虫文太後日談

霧の中、ナイタイ高原の牧場でアイスクリームを食べた。牧場の中に観光用のお土産屋さんがあって、アイスを売っていたのだ。北海道のアイスはとーってもおいしい。もう北海道は何でもおいしい。寒いんだけど、アイスを堪能してからティナ坊に戻った。やっぱり走る以外にあんまりやることがない気がした。

なんとはなしに、富良野に戻ることにした。また宝来に泊まって今日は文ちゃんのにんじんを食べよう。そう思った。でも結果的に、宝来に戻ることができなかった。納沙布から富良野まで来た時には、結構長距離を移動できる自信みたいなものができていた。でもナイタイ高原は山で、地図ではわかりにくいけど高低差があったのだ。そして山を登ったり降りたりしながら、ぐるっと回って富良野に行かなければならない。この「ぐるっと回って」がまた、かなり時間がかかった。そして富良野に着く前に、すっかり真っ暗になってしまったのだ。私は途中で宝来に戻るのをあきらめ、そこから目指せる近いライダーハウスを地図で探した。富良野に戻る途中に、二つライダーハウスが並んでいる場所があったので、とにかくそこまで行くことにした。二つ並んでいるのだから、どっちかには泊まれるだろう。

ちろりん村

一本道で木の他には何もない所に二軒、ライダーハウスが並んでいた。私はゆっくり走って両方見てみてから、きれいなログハウス風の方に入った。ハウスの前が広く空いていて、そこにバイクや車を停められるようになっていた。ティナ坊を停めてから中に入ると、おばさんと2人のライダーがいた。

「こんにちわ~どうぞ。」おばさんがやさしく迎えてくれた。なんだか今までのライダーハウスとは感じが違う。ハウスもすっごくきれいで木目が上品なログハウス風、中もキッチンと男子部屋、女子部屋と二つある。これってほんとにライダーハウス?と疑いたくなるようなペンション風だ。部屋の中には合宿所みたいな作り付けの二段ベッドまであった!

「うちは一泊一人1000円よ。」

う~ん安い!あんまりきれいなのでちょっと心配していたのだけど、値段は普通のライダーハウスだった。ヨカッタ!

私はそこでちょっと落ち着いてから、文ちゃんの携帯に電話した。たどり着かなかった時心配しないように、あらかじめ聞いておいたのだ。

「文ちゃん?ごめん。だめだったー日が暮れたよ。」

「なんだよ~。にんじんいっぱい採って待ってたのに~。今どこ?」

「ちろりん村ってとこ。」

「ちろりん村!懐かしい~!俺さ、自転車でそこの隣のやつに泊まったことあるよ。必死で走ってきてちろりん村あるの知らなくて最初に見えたハウスに飛び込んじゃったんだよ。でもそっちの方がすげえボロでしかも変なおやじがやってて、そのおやじとケンカしたんだよね。で次の日の朝明るくなってから見たらすぐ隣にめちゃくちゃきれいなちろりん村があってさ、あ~な~んで俺はほんの後もう少し、がんばって走らなかったんだろう~、ってすげえ後悔したんだよね。」

「でもさ、二軒ハウスが並んでる所なんて滅多にないから、普通一軒あったらそっちに入っちゃうよ。しかも自転車じゃさ、次何キロ先かわかんないし、通り過ぎるのって勇気いるよ。」

「そうなんだけどさ、人生だなあって思ったんだよね。ほんとに後少し我慢して走っていたらきれいな方があったんだなあって。」

「あはは~。」

後日談

実は文ちゃんにはその後がある。野菜を送るから住所を教えて、と言っていた文ちゃんから、本当にダンボール箱いっぱいの野菜が届いたのだ。その時は一人暮らしをしていたので、とってもうれしかった。にんじん、ほうれん草、じゃがいも、たくさんごろごろ入っていてとても重かった。「後で送るから」という人はいるけれど、本当に送ってくれる人は割りと少ない。私は文ちゃんから荷物が届いたときびっくりした。お礼の電話をすると「だって送るって言ったら送るよ~。」と彼は笑って言った。

北海道旅行の次の月に私はモルディブに仕事で行くことが突然決まり、彼はとうとうインドに旅行に行くことにした、と言った。モルディブで仕事をしている間、「今サイババの家に居候してます~」などの相変わらずなメールが何通か来た。文ちゃんは何ヶ月かインドを旅し、私は2年間モルディブで働いた。メールで私も結婚したことや妊娠して夫のロビちゃんと日本に帰国することなんかを近況報告した。

日本に戻ってから、2年半ぶりくらいに会おう、ということになった。文ちゃんは関東圏にいるから、私の実家の近くまで行けるよと言ってくれて、うちから電車で3駅の場所で待ち合わせをした。ロビちゃんはその日バイトが入っていたので、私だけ出かけた。でもお互い2年前にたった一日会っただけである。わかるかな~と思いながら、待ち合わせ場所の広場でベンチに座った。私は道内旅行の頃はショートカットヘアだったけど、この時は長くてド金髪だったし、日に焼けてもいた。

でも、文ちゃんは駅から出てきて迷うことなく私の方にまっすぐ来て言った。

「久しぶり!」

私は文ちゃんがあんまりわからなかった。「ええ~!よくわかったね!久しぶり~!」

「すぐわかったよ。だってこの広場で待ってる人の中で一番日本人らしくないんだもん。」文ちゃんは笑った。

確かに私はその時昔バンクーバーで買ったネパールかどっかの民族衣装風の服を着ていた。それが大きめで妊婦でも着られたから着てただけなんだけど、確かに金髪でそれを着ていてちょっと妙だった。文ちゃんは人なつっこい笑い方が変わらない。

「俺も、そろそろ旅人やめようかと思ってるんだ。」お茶をしながら文ちゃんは言った。「もう何年も旅人やっててずっと住所不定でさ。でもそろそろ旅を形にできたらいいなと思ってるんだ。」

その後、文ちゃんがどういう風に旅を形にしているのか、まだ聞いていない。

そしてそれからまた2年後、ひょんなことから私はミリオネアに出たのだが、オンエアされてからすぐに文ちゃんからメールが来た。

「なんか知ってる人がテレビに出てる???と思ったらヒロコだったんですけどー?!」

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「旅~北海道編~」カテゴリの記事

コメント

スーパー銭湯!

今まで銭湯はいっぱい人がいて苦手だったんだけど、
すぐるっちも銭湯大好きだから、
わたしも銭湯慣れしたかったんだよね〜。

マッサージ椅子もやりたいし〜。

今度行こう行こう(^◇^)♪

しかし文ちゃんのその後すごい気になる!

投稿: yuki | 2006年10月 6日 (金) 12時53分

ほんと、文ちゃんその後どうしてるだろうねえ。ちょっとメールでもしてみよう~!もう旅やめるって言ってたけど、そんなに簡単にやめられるのかなあ~。またどっか旅してる気もするよね。

投稿: ヒロコ | 2006年10月 9日 (月) 00時12分

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