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オペだ!

同室のおばさんが一番目で、私の手術はその日の二番目だった。手術室に行く前に肩に麻酔の注射をするのだが、そのおばさんはものすごく痛がっていて、私は「う~ん、痛そうだな。」とか思いながら順番を待っていた。

おばさんの手術は短くてすぐに終わり、看護師さんが私の所にやってきて同じように肩に麻酔を打った。でも私は子供の頃、毎週アレルギー対策の注射を2本両手に打っていたので注射慣れしていてちっとも痛くなかった。

手術室に入ると、いつもの先生が「はい、そこに座って~。」と、椅子に私を座らせた。手術をどういう風にやるのかなんて、手順の説明はきっと患者にはないものなのだろう。ま、どういう内容の手術か、というのは説明しても、やり方はいちいち患者には説明しないよね。きっと。でも、手術台に寝るものだと思っていた私はちょっとびっくりした。

え?座ってやるの?ドキドキしていると看護師さんが「はい、これつけるよ~。」と目隠しをかぶせた。真っ暗だ。何にも見えない。「あ、それからこれ。」私の手に膿盆が渡された。あの、ひょうたんみたいに曲がった形の銀色の皿だ。「これこうやって顔の前で持っててね。血を飲むと気持ち悪くなっちゃうから、血はここにペッペッて吐いて。」

膿盆と言うと「彩佳さん、膿盆。」「はい。」って思い浮かぶけど、当時は、まだDr.コトーはもちろん存在していなかったので、さしずめ「ピノコ、膿盆。」「はいよのさ!」ってとこだろうか。でもブラックジャック先生はあんまり「膿盆」という単語を使ってなかったね。それよりは切除した臓器を「ベチャッ!」って置いたり、「カラーン!」って抜き取った弾丸とか胆石とかを置いたりしてたかな。って膿盆の話は置いといて。

これを自分で持ってろってことは、は、鼻を手術するのに局所麻酔なんだ?私はてっきり全身麻酔で寝るんだとばっかり思っていた。え?え?とわけもわからず、しかし目隠しで何も見えない。どうなるの???

「はい、ちょっと上向いて。始めるよ。」

「はい。」

すると、何が始まったかって・・・。先生が上を向いている私の鼻の穴に棒みたいな物を入れたかと思うと・・・。

カツーン!!

もっのすごい衝撃が!そう、見えないからわからなかったけど、多分、ノミみたいなのを入れてカナヅチみたいなのでカーン!と叩いて削っているのだ。これは知っている!大工だ!ほんとに大工さんがホゾを彫る時みたいに削っているのだ!

ちょ、ちょっと待って!と思おうが、もちろんおかまいなく、カン、カン、ガツーン!!と削られている。この衝撃たるや、想像を絶するものだった!まあ、誰もノミで鼻の骨を削られる想像なんてしたこともないけど。ボクシングで顎のほんの先だけに当たるパンチで、中身の脳みそはそのままで頭蓋骨だけチッと揺さぶられてダウンするというのを聞いたことがあるが、まさにそのパンチの気分だった。ガン!とノミが骨に当たる度に頭の中身がドワ~ン!と揺れる感じがした。さっさとダウンしたいけど、そうもいかない。麻酔は効いているから衝撃はすごいけど痛くないのだ。ただ、鼻というのは顔の中心なのでとにかく芯の芯を壊されているような気分だ。

そして、喉の奥に血が流れてきた。ああ、血を飲んじゃいけないって、これか、と思ったけど飲んじゃいけないも何も、だぁーだぁー落ちていく感じで全く対処できない。膿盆は空しく意味なしだ。試しにペッペッと言われたとおりにやってみたけど、ほんとにただペッペッてやってるだけだった。「あっあ、飲んじゃだめよー。」看護師さんが声をかけてくれるけど、血はどんどん流れて喉にごくごく入って行った。舌の奥の方がざらざら粉っぽくなってきた。きっと削れた骨のかけらだ。かなり血を飲んだと思うけど、全然気持ち悪くはならなかった。

すごく長く感じたけれど、ようやく大工仕事は終わったようだった。次は粘膜を切るんだったっけ。麻酔が効いているものの、切っている感触はよくわかった。なんだか、かゆくてかゆくてでも長年手が届かなかった耳の奥~の方をキッキッとかいているような、「あ~そこそこ!そこなんだよね~!」というような感じだった。これはとっても気持ち良く、すっきりした。

手術は終わって、私は病室に運ばれた。

この後、段々麻酔が切れてくるに従ってすごい痛みがやってきて、私は手術の後から次の日も丸々二日、起き上がることもできなかった。今まで骨折も大きな怪我もしたことなかったので、こういう経験はなかった。骨を削ったんだから、これって骨折の痛みなんだよな~なんてことを考えながら、ベッドの上でうんうんうなっていた。いやあ~痛かった。

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受信: 2007年1月10日 (水) 00時57分

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