« 幼稚園もう平気だよ | トップページ | メリーちゃん »

入れ替わり

チビクロが来てから生活が一気に忙しくなった。午前中は子供二人を幼稚園に送り出すのがどたばたの上、その合間にチビクロにミルクをどこかであげるのだけど、これが時間がかかるので午前中が一番忙しい。もちろん、子供たちが幼稚園から戻って来ても3~4時間おきにミルクをあげるのは変わらない。でもいつも大声でビャービャー泣くのでずいぶん元気になったなあと思っていた。

でも、子供たちを幼稚園から連れて戻ってきて、その日はお昼ごはんの支度ができなかったのでレストランに食べに行き、帰ってきてもまだチビクロが泣いていない。いつもなら、戻ってきた私たちの声を聞けばビャービャーと泣き始めるのに、やけに静かだ。そうっと箱を覗いて見ると、中に敷いてあるタオルにうずまって上からは姿が見えない。もしかしていない?そんなわけはないよね・・・と思いタオルを取ってみると、いたいた、下の方に寝ていた。寒かったのかな?と思い抱き上げてみたら・・・体がひんやりしている。さっと焦りが走った。どうしよう・・・!きっと寒かったんだ・・・。チビクロはなんだかぐったりしていて、いつもは私が抱き上げればすごい勢いで泣くのに全然泣かない。小さく体をふにゃ~っと動かすだけ。そして体が冷たくなっている。やっぱり、こんなに小さかったらいつもお腹の中に入れてあっためるくらいしないとダメだったのかな・・・。心臓がドキドキしながらチビクロを両手で包むようにして暖めながら、急いであったかいミルクの準備を始めた。

今日は子供たちを学校に送り出してから銀行に行って、そのまま学校へ迎えに行ってその後お昼ごはんを食べに行ったので、ちょっと長い間放っておきすぎたかもしれない・・・。大丈夫かな、大丈夫かな、と私は思いながら急いでミルクを作った。実は二日前に哺乳瓶を買って試してみたら、口には入らないけれど、びちゃびちゃなめるので注射器から哺乳瓶に変えて飲ませていたのだ。もしかして、それがよくなかったのかしら・・・。もう色んなことを考えながら哺乳瓶の先からミルクを少したらしてチビクロの口につけてみた。チビクロはちょっと泣くような口の動きをして、でも声が出なくてパクパクしながらミルクを少し飲んだ。ああ、飲めるかな、と思いまた口にミルクを入れてみる。娘がチビクロちゃ~ん、と寄ってきたので、「どうしよう、チビクロちゃん死にそうだよ」と言うと「えっ?」と驚いてから、「じゃあお墓作るの?」と聞く。去年ロビちゃんのママが亡くなったときにお墓に埋めたんだよ、という話をしたからだ。「ううん、まだ生きてるんだけどね、すごく弱ってるの。どうしよう。ママすごい心配だよ」と私が言うと、「大丈夫だよ、ママ。ミルクあげて」と言って、またバービーのDVDを見始めた。まあ、まだ5歳になったばっかりだから、しょうがない。そんなこと言われてもわかんないよね。

でも私はとても怖くて心配でドキドキしながらなるべく寒くないように手で包んでミルクを少しずつあげ続けた。チビクロは口にミルクが入るとちょっとおっぱいを飲むときみたいに手を動かすけど、力がなくて本当にぐったりしている。そして、しばらくミルクを飲んだらちょっと疲れた、という感じで私の手の中にくるんと丸まってしまった。・・・もうミルクいらないのかな・・・。まあ、弱ってるときにそんなにごくごく飲めないよね・・・。と私も思い、しばらく両手で包んでそのままチビクロをずっと眺めていた。ず~っとず~っと・・・何分くらい経ったかわからないけど、ふと、なんだかふと、力が抜けたような、軽くなったような感じがして、えっ?と思って少し頭をさわってみた。でも、チビクロはもう動かなかった。

死んでしまった。

私の手の中で死んでしまった。

ああ、まさに今だった、という瞬間がわかったので、私はつかめるものならちょっと待って、ってつかみたいくらいだった。でも逝ってしまった。

ちょうど娘が「ママ~」と何かを言いかけて私の方を見たので、私が「チビクロちゃん、死んじゃったよ」と娘に言った瞬間に私の目から涙がぼろぼろっとこぼれて娘がものすごく驚いた表情をした。そして、あっという間に娘も泣き始めた。きっと、親である私が「死んだ」という状況で涙を流したので「死んだ」ときにはそうするものなんだ、と思ったんだと思う。娘は声を出してわ~ん!と泣き始めた。

まあ、私も一応親なので、子供の前ではそんなに泣いたりしてはいない。それにどちらかというと子供を産んでからそんなに泣くようなシチュエーションがなかったかもしれない。いずれにしても、私が泣いているので娘は号泣し始めてしまった。

でも、私も止められなくてすごい泣いてしまった。だって、毎日ミルクを作って夜中も起きて飲ませてたんだよ・・・。まだ目も開いてなくて、光も見ていないんだよ・・・。こんなに小さくてママと離されてどれだけママに会いたかったか。小さいのにずいぶんがんばったのに。

そして私の悪いクセで妄想力が強いもんだから私はもうチビクロが大きくなって一緒に生活するところを考えていた。ホテルもオープンして、うちの招き猫みたいになって、こんなに大きくなったねえ、なんて写真を見て笑って・・・というところを想像してしまっていたのだ。

私が泣きながらロビちゃんに電話をすると、すぐに来てくれて、一緒に埋めに行くことにした。今のアパートはビーチから近いので、ビーチ沿いの公園の木の根元に埋めた。あんまり小さくて私の上着で包んでもちょっとした穴ですっぽり入ってしまった。上から砂をかけるところは見たくなかったので海を見ていた。

ロビちゃんの弟、通称コッコは私が猫が死んで泣いているのにビックリしていた。モルディブではそこまで猫にいれこんで飼っている人はいないのだそうだ。もちろん飼っている人はたくさんいるけど、死んでも誰も泣かない。人間じゃないから。ほんとにかわいがってたんだねえ、とコッコも黙って埋めるのに一緒に付き合ってくれた。

ロビちゃんがこれからまたホテルの準備をしにビルに戻るけど、すぐに僕がまた猫を連れてくるから、と私に言った。私はべつに代わりなんていらない、って思ったけど、説明するのもなんだかだったのでただうんうん、と言った。

そしてその日の夕方、夜ごはんの準備をしていたらどうも外からニャーニャーと子猫の鳴く声がする。チビクロの幻聴かしら、とうとう私もヤキがまわったかも、なんて思って窓の外を見てみたけど、別に何も見えない。そのまま料理をしていたら、コンコンとロビちゃんが帰って来た。ロビちゃんはカギを持って行ってないので私がドアを開けると、なんと片手に子猫を持っている。ほんとに、猫を片手に、である。その猫がまた、ビャービャー鳴いている。「どうしたの?!それ」私がほんとにビックリして聞くと、ロビちゃんがひとこと。「そこでひろった・・・」。うちの目の前はヌール・ミスキーというモスクで、そのモスクの前でビャービャー鳴いていたのだそうだ。きっと、さっき私が聞いた鳴き声もこの子だったに違いない。嘘のようなほんとの話だけど、ほんとにいたのだ。

「ほんとだよ、うちに帰ってきたらそこにいたんだよ」。猫は大体2ヶ月くらい。目もぱっちりしていて、小さいけど元気いい。「これは死なないよ。本当はもうちょっと小さいの、でも目は開いてるやつをそのうちもらってこようと思ってたんだ。でも、そこにいたもんだから」とロビちゃんは言って私にその猫を渡した。猫は人懐っこくておとなしく私に抱っこされている。子供たちはまた猫が来て大喜び。

さっきチビクロちゃんが死んじゃったばっかりなのに同じ日にやってくるなんて。

ちょっと複雑だったけど、その子はものすっごく腹ペコですごい勢いであげたツナ缶を食べているし、泥で汚れてガビガビしている・・・。チビクロももう少し育ったらこんな感じになっていただろうか・・・。

そうしてやっぱり4人家族+猫一匹になってしまった。

|
|

« 幼稚園もう平気だよ | トップページ | メリーちゃん »

ホテルオープン準備期間」カテゴリの記事

コメント

ごめんなさい・・・ひろこさん。
少しコメントするのが遅かったですcrying
私も子ネコから育てたんですけど、
哺乳瓶に針で穴を開けて飲ませてましたよ。
あとはペットボトルにお湯を入れて湯たんぽにしたり。
今度の子ネコちゃんが、看板ネコになりますようにclover
会いに行きますlovely

投稿: まり | 2008年6月26日 (木) 23時39分

まりさん!
コメントありがとう!いえいえ、遅かったなんてことはないですよ。やっぱり私が育て切れなかったんですわ。でも、今度の子猫はとっても元気で、それが救いです!毎日部屋の中を走り回ってくれてます。
ぜひぜひ会いに来てくださいね!
お待ちしていますよ~!

投稿: ヒロコ | 2008年6月27日 (金) 22時18分

読んで、ないちゃった。

やっぱり、日本はちょっと特殊なのかな?
私、小鳥かってて、死んだとき、ずっと大泣きしてた。
しかも、いまも思い出すとまだないちゃう。

ひろこちゃんのかってた猫、むじ。
思い出したよ。。。。

ひろこちゃんに娶ってもらえて、幸せだったね。

投稿: riko | 2008年6月28日 (土) 16時12分

rikoちゃん~!
私も、書いてて泣いちゃったよ・・・。カフェで泣きながらPC打ってるすげえヘンなやつ・・・。でも今でも考えると涙が出ちゃいます。
Pet lossって言葉があるから日本だけじゃなくても欧米でもペットは大切な家族だと思うんだけど、ここはどうもそうじゃないですわ・・・。ちゃんと世話はするけど日本人みたいにすっごいかわいがる人っていないらしいし。一緒にベッドで寝るのにロビちゃんはすっごいびっくりしてたよ。シャワーを浴びさせていたのにもロビちゃんの弟はビックリしてた。そこまでしないみたいだねえ。
幸せだったかな。そうだといいんだけど。

投稿: ヒロコ | 2008年7月 1日 (火) 15時42分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/145216/21910189

この記事へのトラックバック一覧です: 入れ替わり:

« 幼稚園もう平気だよ | トップページ | メリーちゃん »