人形の縁

美大受験、デザインのバイトをしていたときの友人達を見ても、みんな「絵を描くのが好き」から始まって段々もっとピンポイントに自分のやりたいことが見つかっていくもので、美大も入学した科と卒業した科が違うのは普通だった。まあ、大学ってのはどんどん細かくなっていくものだけど、たとえばデザイン部を一緒に受験した友達も卒業したときは染色科だったり陶芸科だったりした。他にも彫金家に弟子入りした友人もいたし、一緒にバイトした仲良しの子はタイルにはまって自分で借金して釜を買って庭に置き、毎日バイトの後夜中にタイルを焼いてチーンンン・・・と釜のタイマーを響かせていた。陶芸の子は自分で遠くまで土を買いにでかいリュックをしょって出かけて行ってたし、書道家になりたい、と言っておそば屋さんの壁貼りメニューを書いていた子もいた。

私はというと、バイトをしている頃に天野可淡さんのカタンドールという球体関節人形の写真集を見て衝撃を受け、それ以来すっかり球体関節人形にはまってしまった。天野可淡さんはその頃すでに他界されていたので(お若かったのですが)出版されている写真集を見るしかなく、私は彼女の人形の写真集を毎日眺めては人形をモチーフにして絵を描いたりしていた。でもどうしても自分で人形を作ってみたくなり、当時二箇所しかなかった人形制作スクール(今は増えているのかしらん?)の両方に行ってみた。

最初に行ったのは四谷シモン先生のスクール。四谷シモンさんの人形も大好きで、もちろん写真集は持っていたのでまず行ってみたのだ。前出の、バイトを一緒にやっていてタイルを焼いていた友達に「四谷シモンのスクールに見学に行くんだけど行かない?」と誘うと「わー一度見てみたい」と見学に同行してくれた。そこには想像以上にたくさんの生徒さんがいた。

うーん・・・と悩み、次に吉田良一先生が開いているスクール、ドールスペース・ピグマリオンに見学に行った。吉田先生の制作した球体関節人形の写真集ももちろん私は持っていたし、天野可淡さんの写真集の写真撮影をしたのも吉田先生なのだ。私はこっちのスクールを見に行ってすぐに通うことに決めた。先生が気さくな方だったし、スクールの雰囲気もとてもよくて私は毎週楽しみに通うようになった。仕事が忙しいときはなかなか行けなかったりしてコンスタントに来られる他の生徒さんに比べると私の進み具合は遅かったけど、それでも結構楽しく初めての球体関節人形作りを堪能していた。もともと彫塑(粘土で立体作品を作ること)は好きだったのでそれも性に合ってる気がした。何よりもすんごい楽しかった。

6ヶ月かかって初めての人形が一体できあがり、自分で接写用にカメラも買って写真も撮り、ではと二体目を作り初めてすぐにモルディブへの仕事が決まってしまい、吉田先生に引っ越すことをお話した。先生は「日本に帰ってきたらいつでもまたスクールに戻ってくればいいよ」とおっしゃってくださった(全然戻れてませんが・・・)。それでも最初はモルディブのリゾートの島で作品活動を続けたいと悪あがきをしていたんである。アメリカにいるアート系の友達がアメリカから人形制作用の部品をたくさん送ってくれたんだけど、ここは偶像崇拝が禁止されているので税関で引っかかってとうとう私の元へは箱は届かなかった。きっと荷物を開けてチェックしていた税関の人もビックリしただろうと思う。髪の毛や目玉の部品が粘土と一緒に入ってたんだもんね・・・。でも目はガラスのいいやつを使うのでとーっても高級品なんだよぅ~。せっかく友達が送ってくれたのにね・・・。

そんなわけで私はすっかり制作活動からは遠ざかってしまっているけれど、今でもたまにネットで人形を色々見たりしている。今は作家さんもずいぶん増えて人形もたくさん検索できるようになった。そして検索していると必ずと言っていいほど出てくる人形屋佐吉という名前が気になるようになった。そこで「人形屋佐吉」を検索して読んでみると、札幌にあるお店の名前だということがわかった。ずいぶん昔からあるらしく、色んな人がブログで「謎のお店」「人形屋って何?」「看板が不気味で子供の頃から気になっていた」などとそれぞれのエピソードを書いている。総合してみると子供の頃からあるお店で気にはなっていたけど開いているところを見たことがない、もしくは開いているときがとても珍しいというようなお店なのらしい。そこで人のブログではなくてきちんと情報を調べると、佐吉さんという方はご自身も人形家で札幌で「人形屋佐吉」という名前で店を営んでいること、今は都内にも店を構え、佐吉さんが札幌に戻ったときしか札幌店は開けないのだそうだ、ということ、現在活躍中の恋月姫(人形作家)さんのご師匠なのだということ、お店のコレクションはすばらしいらしいことなどなどが書いてあった。ふーん・・・都内にお店があるのなら次に日本に帰ったときに行ってみたいなあ~なんて思っていたら、ある記事を読んでビックリした。

佐吉さんは片岡佐吉さんとおっしゃるのだそうだ。

実は私も片岡さんなのだ。

もしかして縁のある方なのかしら・・・?とも思うが片岡、つまり父方の親戚はまったく付き合いがないので私は誰一人として知っている人はいないのである。聞こうにも父も父方の祖父母もとうに亡くなっているので聞きようがない。「子供の頃からある店~」というフレーズからご年配の方であろうことは推測できる。

まったく偶然の片岡さんかもしれない。片岡さんだっていっぱいいるもんね。でも、もしかして何か縁があったとしたら、会ったことのない人なのに同じものに心惹かれるのって血の中にあるの?!と不思議に思ってしまう。

ぜひ一度お店に伺いたい・・・と密かに思っているんである。

子供たちが二人とも小学校に通うようになったら、私もまた何か作り始められたらいいなあ・・・というのが今の私の夢・・・だな。そんな日来るんかいね・・・。

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