鼻のレーザー治療!

やりました。昨日です。

鼻風邪を引いてひどかったんだけど、「熱がなければ大丈夫」ということで、無事にレーザー治療を受けられました。

昔(15年前)私が受けた鼻の手術は、鼻の中の骨を削る手術と、このレーザー治療の二つを同時にやったのですが、今回はレーザーだけ。レーザー治療とは、鼻の中の粘膜がアレルギー反応を起こして腫れ上がり鼻がつまったり匂いがわからなくなったりするので、その粘膜ごと、レーザーで焼き切ってしまうという画期的な治療方法です。反応を起こし腫れてパンパンに膨らんでいる粘膜ごと切ってしまうのでアレルギー反応は格段に少なくなるし、鼻もすっきり通ります。でも、15年のうちに粘膜は復活してしまって、また膨らんで私の鼻をつまらせていたんですねえ。骨は復活しませんから、削るのはもちろん一回で十分ですが、辛いのなら粘膜はこうやってまた切るのが良いそうです。

特にものすごい腫れていた私の鼻の中を診察して先生は「あなたはレーザー効くタイプだよ」と太鼓判。昨日、やっていただきました。

みんなに「痛かった?」と聞かれましたが、局所麻酔をするので、ちっとも痛くありませんでした。チリチリと焼かれて自分の鼻の穴からケムリが上っていくのがちょっとホラーでしたが。焼く粘膜は奥の方なので、普通に指を突っ込んで触れるような場所ではないため、麻酔が切れたあとも特に痛みはなし。先生も「まあ出産経験してるから平気だろ」と。え?そんなもんですか。まあ、前回の骨を削った時とか、親知らずを抜いた時とかの方が20倍くらい大変でした。今回はなんてことなく無事に終了~!

さて、終わってすぐ息を吸うと、おおお~ものすごい量の酸素が~やってくる~!もう肺がいっぱいです♪すごいなあ。みんなこんな楽して息吸ってんだなあ~。でも風邪のせいか、通ってからも匂いはまったくせず。先生も「え、匂い全然しない?うーん・・・」と何か言いたそうで、でも何もおっしゃりませんでした。も、もしかしてほんとに神経腐ってきてる・・・?こわいっす。鼻風邪早く治って匂いがわかるといいなあ。

術後一ヶ月はこまめに診てもらわなければならないので、しばらくは通わないとです。先生はレーザーで焼きながら、「これも彫刻と同じだからね。一人一人が僕の作品なんだよね。」とアーティストな発言をしていました。もう700人以上レーザー治療しているそうです。すごいですね。県下では一番多いんだそうです。白衣ではなく、紺の診察着で胸にししゅうでDr.~と名前が入っています。こだわりのある先生なんですね~。

この耳鼻科のある駅の中の化粧品屋さんで、ついでに娘が欲しがっている紅筆を探しました。ミニーちゃんのリップグロスを買ったのですが、スティックではなくケースなので大人のように筆でちょんちょんと付けたいと言うのです。でも探すと柄が長いのばかりで、しかも高い。2500円とか、そんな良いのいらないしなあ・・・と悩んでいたところ、店員さんが声をかけてくれました。子供が私のマネをして使いたいだけだから、危なくないように短くて安いのが欲しいんですがと説明をすると、なにやらその店員さん、全然違うところをごそごそ探し始めました。何が出てくるんだろうと待っていると・・・「これ、見本の口紅を試すときにお客様にお出しする紅筆ですが、良い品ではないけどよかったら差し上げますよ」と見本用のものを何本か出してきれいなのを選んでくださった。とっても小さな筆で、まさにピッタリ!しかもいただけるなんて、なんて親切な人だろう~!だって、他になんにもお買い物してないのよ~?

感謝してその筆をいただき、家に帰ってキレイに洗ったら(筆洗うの得意だよ!)すばらしい筆になりました。娘にもその店員さんの話をして「やさしい人にもらえてよかったね」と言ったらとてもうれしそう。早速シンデレラの鏡をのぞきこみながらリップクリームを塗っていました。

昨日も良い人に出会って良い日でした。

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またもや鼻!

昨日耳鼻科に行きました。

とにかく今年は鼻の調子が悪くて、そのせいか耳も変。奥がかゆくてかゆくてしかも耳抜きできない時みたいにぼわ~っとするとなかなか治らない。鼻もいつもは暑いと調子が良いのに、今年の夏は暑かったにも関わらず、匂いが全然届かない。いつも夏は匂いがわかりやすいのでコロンをつけたり、アロマの小物を買ったり、香りをエンジョイする季節なのに、今年はまったくダメです。

近所の耳鼻科にまず行ってみたんだけど、ここがちっとも話を聞いてくれない。鼻も耳もかなりつらいことを訴えているんだけど、じゃあ、はい、といつも鼻のスプレーをくれるだけ。そこをあきらめて他を探そうとキョロキョロしてみると、大和の駅に”レーザー治療”と書いてある耳鼻科の看板が。早速昨日行きました。

とても混んでいて(近所の耳鼻科はガラスキだった)、順番待ちの間にラッキーなことに息子は寝てしまった。これでゆっくり診察が受けられる!さて順番がやってきて先生と話をすると・・・私の鼻の中をぱっと見て先生は一言「あーほんとにアレルギー性鼻炎かなり進んでるね。これならすぐにでもレーザーやれば少しは楽になるよ」とのこと。そしてまず何にアレルギー反応を起こしているのかきちんと原因物質を見極めるために採血、それからレントゲンを取りました。いやあ息子寝てて良かった。じゃないとレントゲン写真取るためにレントゲン室に一人で入ってる間に大泣きだったことでしょう。

できあがったレントゲン写真で先生が説明してくれましたが・・・まず、普通の問題ない人の写真を出して私のと比べてくださったのですが、普通の人は空気が通る場所が白黒写真の青空みたいにスカッと抜けているんですね。ところが、私の写真はほとんど全部白~く濁っています。ちっとも空気が抜けてないんです。そして先生がおっしゃるには、眉間のところ当たりに嗅覚の神経があって、そこはちゃんと匂いが届くように黒く抜けているんですが、私の場合はそこも真っ白になっていて、これは粘膜が腫れてふさがっているのだそうです。「普通、手とか足でもしばっておいたりしたらそこから先が腐っちゃうでしょ。ここも、年中腫れあがった粘膜に押されているわけだから、この状態じゃ嗅覚の神経が腐って死んじゃうよ」と言われ、すっごいショック!ふざけて「あ~もう腐ってるかも~」なんて言ってたけど、ほんとに腐っちゃうかもなんて!?そして先生がひとこと。「あなた、これ長年ほおっておきすぎ」そ、そうですよね・・・。「これ目だったら失明だよ」とまで言われ、「鼻がここまで悪いと耳も相当きてると思うんだけど」と言われました。

そうなんです!今年、耳の聞こえが悪いんですよ!自覚はしてました。何と言ってもショックなのが、こんなに今年は蚊が多いのに、一度も蚊のあのプ~ンという音を聞いてないんです!去年までは聞こえてたのに、もしかして耳が老化してるのかな・・・って思ってたんですよ(老化すると高音から聞こえなくなるんだそうです)。でも、そうしたら先生が「男の人の低い声が聞き取りにくいんじゃない?」と。いやあ、それは自分では気にしてなかったですが・・・確かに今年は「え?」って聞き返すことが多くなったかな~・・・とは思いますけど。とにかく耳はぼわ~っとしてたり抜けてない感じがするんですよね。すると先生、「このままの状態でほうっておいたらあなたあと10年くらいでかなり耳悪くなりますよ」って・・・。10年って早いよねえ?!ヤバイ、かなりヤバイです。

うちはそれでなくても目の前が線路で、いつも電車の音はガタンゴトン~米軍飛行機の航路の真下なので米軍機もガーン!!店をやっているのでお店にお客さんが来たときのセンサーでの音が最大音量でピンポーンピンポーンブーブーブー(出入り口が二箇所あるのでどっちから出入りしてるか音も二種類ある)、子供達は大騒ぎ、とにかくうるさい環境です。そんな中で「あー今テレビ全然聞こえなかった~」なんてザラにあります。どこに出かけて行っても静かだな~と思うくらい、音であふれている家です。聞こえないよ~なんて言いつつ、妻夫木くんの主演ドラマ「オレンジデイズ」の再放送見ながら「へえ~手話でお茶飲む?ってこうやるのか~」なんて関心してる場合じゃない!自分が耳ダメになっちゃうよっ!!

てなわけで本腰入れて耳鼻科に通うことになりました。でも先生に、12月にモルディブに引っ越すことを話したらものすごく驚かれて、「モルディブでもインドでも、向こうにはちゃんとした耳の医療機関があるの?」と言われ・・・「モルディブにはないです。インドとスリランカはわかりませんけど・・・」と正直に言うと、「じゃあとにかくできるだけ早くひとつひとつやっていきましょう」と言ってくださった。まず、血液検査でアレルギー源をはっきりさせ、それから鼻のレーザーもやって聴覚検査も鼓膜の検査も全部順を追ってやることになりました。耳は実は鼻が悪いのもそうだけど、顎関節症も原因になっているとのこと。そうなんです、顎関節症も鼻のレーザー手術も15年くらい前に両方治療してるんですよね。そして顎関節症は最近悪化、半年前まで口腔外科に通っていたばっかり。アレルギー性鼻炎は子供の頃からずっとだし、どれも年季入っててどっから手を付けたら・・・って感じです。いやあ、ボロボロだわ~・・・。先生にも「目先のことと、将来を考えた自分の体とどっちが大事なの?」とまで言われ・・・ってことは相当深刻だよね。でも、私は体が健康で何の問題もないという状態は物心ついてから一度もない!ので(自慢になんないねー)何か問題があることに慣れちゃって危機感がないのかもしれません。でもそれってよくないよね。

今回、薬も処方されて飲まないわけにはいかないので、これを機にやっとこさ断乳をスタートさせることになりました。今日一日飲ませてないんだけど、でもこれが思ったより泣いてないんですよ。意外と話して聞かせるとうん、うん、と神妙な顔をして聞いています。子供なりに納得してるんでしょうか。そして、なんとおっぱいを飲まずに寝ました!いやあすごい!やればできるんじゃん!ってこんなことならもっと早くから断乳してれば良かったよ!これから朝方泣くかもしれないけど、まあ一日大丈夫だったのでなんとかなるでしょう。まず自分の鼻と耳、なんとかせねばですね。聞こえなくなっちゃうのはいやだー。

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匂い初心者

世界が変わるってこういうことだと思った。

カタカタと食事のワゴンがエレベーターから降りるとすぐに匂いでわかった。食べ物とはなんてたくさんの匂いがするものなのだろう!もう匂いだけで食べてるような気分になる。毎日毎日、食事の時間になるとちょっと慣れなくて、何種類もの匂いが目に見えるんじゃないかと思うくらいだった。

外を散歩すると、ホコリや芝生の匂い。大きな国立病院だったので中庭が松林になっていたのだけど、この松の木の匂い。木だけでむせかえるような匂いでこれまたクラクラする。

そして一番驚いたのは自分の手だった。手が、人間という動物の匂いがした。皮膚というか、肉というか、なんだかわからないけど匂いがある。最初ベッドの上でそれが気になって気になって、しょっちゅう手を洗いに行っていた。手を洗って石鹸の匂いがするとよしよし、と思った。でも石鹸の匂いが薄れてしまうとまた手の匂いがするのですぐ洗いに行った。くんくん手の匂いを嗅いでばっかりで、ちょっと見には強迫神経症みたいだ。

退院して家に帰るのに乗った電車がまたすごかった。

おっちゃんの油の匂い。どっかのゲロの残り香。お線香をあげてきたおばあちゃん。部活帰りの高校生の汗。子供が食べてるお菓子の甘い匂い。ごっちゃ混ぜだ。電車っていつもこんなに匂うものなの?!みんなずっとこれを匂ってて平気なの?私は限界に挑戦ばりに息を止めた。

もちろん、悪い臭いことばかりじゃない。イチゴを食べて大感激もした。イチゴって、ふんだんな香りと一緒に食べるとこんなにもおいしかったのかー!イチゴの香りは知っているし、嗅いだこともあるし、大好きだけど、こんな風に味わったことはなかった。なぁ~んておいしいものがあるんだろうと、イチゴを食べまくった。

肉に匂いがあったのも驚いた。牛肉、豚肉、鶏肉、それぞれ全然違う匂いがする。なのに、私はそれまで肉に匂いがあるとは思っていなかった。最初は牛肉が腐っているのかと思ってびっくりした。今買ってきたのに腐ってる?と思ったら、それが牛肉の匂いだよと言われた。豚肉はひき肉だと一層強い匂いで、シュウマイや中華街の本格豚マンが食べられなくなってしまった。少ししてハンバーグもダメになった。なんだか、臭いのだ。今はハンバーグはたまに食べるけど、シュウマイと豚マンは相変わらず食べられない。

毎日驚きの連続だったけど、あまりに目新しくて楽しかった。匂いに興味が出てきて、香水売り場で端から匂いを嗅いで気持ち悪くなったり、シャンプーやコンディショナーや匂いのあるものはいちいち嗅いでまわった。お気に入りの香水を見つけて毎日つけるようにもなった。

以前同級生の友達に言われて理解できなかったことがあった。その友達のお母さんがお義母さんの介護をしていて、おむつを替える時がとてもいやで「匂いを嗅ぎたくない」と思っていたら本当に匂いが全くしなくなってしまったと言っていた。心因性なので”こうやったら治る”という方法があるわけではなく、友達のお母さんはそれからずっと嗅覚がなくなってしまったままなのだそうだ。友達は同級生なのでいつも鼻をぐしゅぐしゅさせている私のことを知っていて、「だからうちのお母さん匂いがわからなくなってからお鍋をこがすようになったの。ヒロコも匂いがあまりわからないから、気をつけてね。」と言った。でも私は最初これが理解できなかった。「なんでお鍋をこがす???」と思っていた。

それは、おばさんがずっと普通の嗅覚を持っていて、突然匂いがわからなくなってしまったからなのだ。これは、私には起きないことなのだ。お鍋を火にかけていたら、見えない場所まで離れたことはない。お鍋をかき混ぜながら本を読んだりするけど、違う部屋に行って匂いで「あ、こげそうだ。」という判断をすることは、私にはできない。

人がもっと嗅覚で物事を判断していたら、私は嗅覚障害者かもしれない。例えば、信号が「進め」がメロンの香りで止まれがイチゴの香りとかだったら、いつまでたっても信号を渡れそうにない。点呼が自分の名前を呼ばれるんじゃなくて自分の匂いとかだったら、返事ができなくて欠席になりそうだ。嗅覚はわりとそういう手段に使われないので自分ではあまり不便に感じない。私にとっての匂いは、匂いを嗅ぎたいと思った時にほとんどぼやけている視界にルーペで見たい物にだけ照準を合わせるようにしてやっとわかるものだ。一所懸命嗅ごうとしても結局わからない時も多い。それが、この手術で裸眼で1.5見えるようになっちゃったようなものだ。だからと言って突然匂いがわかるようになっても、それで判断するという習慣がない。

嗅覚で判断しないから、賞味期限の確認は大切だ。ぼんやりしてて、「な~んか今日の牛乳は甘酸っぱいなぁ。」なんて腐った牛乳を飲み干したこともある。「その牛乳、古いよ!?」と言われて初めて「なるほど!」と納得した。「あ~喉かわいた!」ってオレンジジュースをごくごく飲んでいたらロビちゃんが「僕にもちょうだい。」と飲み、一口で「これ腐ってるよっ!?」と吐き出したこともある。私はそのオレンジジュースも気がつかなかっただけじゃなく、おいしく頂いていた。しかし、お腹がめっぽう丈夫なので助かっている。今まで匂いでわからなくて飲んじゃったり食べちゃったりした後にお腹をこわしたことがない。これが”匂いがわからない”&”お腹が弱い”のセットだったらきっと生き残れないので、やっぱり人間の体はどこかでバランスを保っているのだ。

この手術も十年以上前のことで、切った粘膜も復活して最近はまた匂いのほとんどない世界にいる。こっちの方が慣れているけど、あの匂いにあふれていた生活も懐かしい。一度は手に入れたけどまた失っていくのって、「アルジャーノンに花束を」を実行してるみたいな気分だ。先週近所の耳鼻科に行ったら、「またレーザーで切る?」と言われた。おっ、アルジャーノン復活なるかな?

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モランを乗り越えて

さて、なんとか起き上がれるようになって洗面所に行き、鏡を見て驚いた。鼻が腫れ上がっていたのだ。そりゃそうだ。ぶつけただけだってタンコブができる。

私はじ~っと鏡に映っている自分の顔を見た。大きく腫れた鼻が座っている顔は、まるで冬になるとムーミン谷にやってくるモランみたいだった。

鼻は重い感じはするけど、もうそんなに痛くない。

回診で先生が病室に来て聞いた。

「おい、大丈夫か~?ごはん全然食べてないんだって?」

食べてないも何も、痛くて寝てたんだから、食べられる状態じゃなかっただけだ。

「今日は食べろよ、なっ。」先生は慌ただしく行ってしまった。

この意味は後でわかった。同じ手術で私より少し先に入院していた男の子が近くの部屋にいたので、私はよくそこに遊びに行っていた。入院患者には若い人がほとんどいなくて、私とその子だけが同年代だった。

「だって僕、手術の次の日の朝ごはんからちゃんと食べたよ。」

「ええ~~!?あんな痛くて、どうやって物を食べれんの?!私なんてベッドから起き上がるのもできなかったよ~!」

「だって鼻痛くても腹減るじゃん。」

う~むむむ。こういう前例がいるから私が一日何も食べなくて驚かれるのだ。

とても天気の良い真夏日が続き、私はぼちぼち散歩なんかしてみたが、丸二日間寝ていたので足がすっかりなまってしまい、階段を上り下りするだけですっごく疲れるようになっていた。たった二日歩かなかっただけで、こんなにすぐダメになるもんなんだ~とか考えながら、なるべく歩くようにしようと思った。体は元気なのだし。

何日かして、抜糸をするので診察室に行った。抜糸と言っても縫ったわけじゃないから、取る糸はない。詰めてある脱脂綿を取るのだ。

「はい、取るよ~。」と言ったが早いか、先生は思いっきり鼻の中の脱脂綿をピンセットで抜いた。本当に、バリッ!!!と音がした。これがまた、すんごい痛かった。ちょっと待って、これもう片っぽ?と思っている間もなく、すぐに左のもバリッ!!!と取って下さった。

「はい、おしまい~。」お、おしまいってあ~た・・・。明るい先生なのはいいんだけど・・・。

クラクラしながら診察室を出て、部屋にたどり着く前にまず廊下の椅子にへたりこんだ。い、痛い・・・。こりゃ痛い・・・。もしかしたら手術より痛いんじゃないかと思うくらいだ。でも、この瞬間から変化はもうやってきた。

ぶわぁっと空気が鼻から勢い良く流れ込んで来たのだ。いつもは鼻は詰まっていて空気なんて入ってこない。なのに、脱脂綿を抜いた途端、夏の生暖かい空気が一気にやってきた。

な、なんだこりゃ!

がんばって一所懸命吸い込まなくても空気が入って来る!しかも・・・その空気は匂いがした。

その時から、私はあふれる匂いの洪水の中に身を置くことになった。

こんなにも世界には匂いがあふれていたのだ!色んな物には匂いがあったのだ!

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オペだ!

同室のおばさんが一番目で、私の手術はその日の二番目だった。手術室に行く前に肩に麻酔の注射をするのだが、そのおばさんはものすごく痛がっていて、私は「う~ん、痛そうだな。」とか思いながら順番を待っていた。

おばさんの手術は短くてすぐに終わり、看護師さんが私の所にやってきて同じように肩に麻酔を打った。でも私は子供の頃、毎週アレルギー対策の注射を2本両手に打っていたので注射慣れしていてちっとも痛くなかった。

手術室に入ると、いつもの先生が「はい、そこに座って~。」と、椅子に私を座らせた。手術をどういう風にやるのかなんて、手順の説明はきっと患者にはないものなのだろう。ま、どういう内容の手術か、というのは説明しても、やり方はいちいち患者には説明しないよね。きっと。でも、手術台に寝るものだと思っていた私はちょっとびっくりした。

え?座ってやるの?ドキドキしていると看護師さんが「はい、これつけるよ~。」と目隠しをかぶせた。真っ暗だ。何にも見えない。「あ、それからこれ。」私の手に膿盆が渡された。あの、ひょうたんみたいに曲がった形の銀色の皿だ。「これこうやって顔の前で持っててね。血を飲むと気持ち悪くなっちゃうから、血はここにペッペッて吐いて。」

膿盆と言うと「彩佳さん、膿盆。」「はい。」って思い浮かぶけど、当時は、まだDr.コトーはもちろん存在していなかったので、さしずめ「ピノコ、膿盆。」「はいよのさ!」ってとこだろうか。でもブラックジャック先生はあんまり「膿盆」という単語を使ってなかったね。それよりは切除した臓器を「ベチャッ!」って置いたり、「カラーン!」って抜き取った弾丸とか胆石とかを置いたりしてたかな。って膿盆の話は置いといて。

これを自分で持ってろってことは、は、鼻を手術するのに局所麻酔なんだ?私はてっきり全身麻酔で寝るんだとばっかり思っていた。え?え?とわけもわからず、しかし目隠しで何も見えない。どうなるの???

「はい、ちょっと上向いて。始めるよ。」

「はい。」

すると、何が始まったかって・・・。先生が上を向いている私の鼻の穴に棒みたいな物を入れたかと思うと・・・。

カツーン!!

もっのすごい衝撃が!そう、見えないからわからなかったけど、多分、ノミみたいなのを入れてカナヅチみたいなのでカーン!と叩いて削っているのだ。これは知っている!大工だ!ほんとに大工さんがホゾを彫る時みたいに削っているのだ!

ちょ、ちょっと待って!と思おうが、もちろんおかまいなく、カン、カン、ガツーン!!と削られている。この衝撃たるや、想像を絶するものだった!まあ、誰もノミで鼻の骨を削られる想像なんてしたこともないけど。ボクシングで顎のほんの先だけに当たるパンチで、中身の脳みそはそのままで頭蓋骨だけチッと揺さぶられてダウンするというのを聞いたことがあるが、まさにそのパンチの気分だった。ガン!とノミが骨に当たる度に頭の中身がドワ~ン!と揺れる感じがした。さっさとダウンしたいけど、そうもいかない。麻酔は効いているから衝撃はすごいけど痛くないのだ。ただ、鼻というのは顔の中心なのでとにかく芯の芯を壊されているような気分だ。

そして、喉の奥に血が流れてきた。ああ、血を飲んじゃいけないって、これか、と思ったけど飲んじゃいけないも何も、だぁーだぁー落ちていく感じで全く対処できない。膿盆は空しく意味なしだ。試しにペッペッと言われたとおりにやってみたけど、ほんとにただペッペッてやってるだけだった。「あっあ、飲んじゃだめよー。」看護師さんが声をかけてくれるけど、血はどんどん流れて喉にごくごく入って行った。舌の奥の方がざらざら粉っぽくなってきた。きっと削れた骨のかけらだ。かなり血を飲んだと思うけど、全然気持ち悪くはならなかった。

すごく長く感じたけれど、ようやく大工仕事は終わったようだった。次は粘膜を切るんだったっけ。麻酔が効いているものの、切っている感触はよくわかった。なんだか、かゆくてかゆくてでも長年手が届かなかった耳の奥~の方をキッキッとかいているような、「あ~そこそこ!そこなんだよね~!」というような感じだった。これはとっても気持ち良く、すっきりした。

手術は終わって、私は病室に運ばれた。

この後、段々麻酔が切れてくるに従ってすごい痛みがやってきて、私は手術の後から次の日も丸々二日、起き上がることもできなかった。今まで骨折も大きな怪我もしたことなかったので、こういう経験はなかった。骨を削ったんだから、これって骨折の痛みなんだよな~なんてことを考えながら、ベッドの上でうんうんうなっていた。いやあ~痛かった。

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ビエンだから

「こんなにひどいと手術するしかないですね。」

「は。手術ですか・・・。」

物心ついた頃から鼻はいつもぐしゅぐしゅだ。詰まったり流れたり、とっても忙しい。匂い?全然わからない。でもず~~~っとそうだから、自分にとってはそういうもんだった。もちろん、耳鼻科にも通った。一年、二年、通い続けたけれど何にも変わらなかった。やっぱりぐしゅぐしゅ。漢方薬も飲んだ。一年、二年、これも変化なし。漢方薬なんてものすっごいまずかった。土瓶みたいなので煮出すのだけど、煮てる間からなんとも言えない匂いが漂う(こういう匂いはさすがにちょっとわかる)。飲んでみるとまた匂いに負けず劣らず、反射的におぇ~っと出したくなる味だった。毎日我慢して飲んでいたけれど、何か変化があったのか、ちっともわからなかった。

診断はアレルギー性鼻炎。人にはいっつも「風邪?」と言われる。最近は「花粉?」ってのもある。鼻呼吸はほとんどなし。なので喉もつらくなる。でも体質なので結局はどうにもできずにそのまま大人になった。そして24歳でとうとう我慢できなくなって国立病院へ出かけたのである。

アレルギー症状も一層ひどくなっていたらしい。だからこそ自分からちょっと大きい病院に行ってみようという気になったのだろう。でもあまりにも自分の一部みたいになっていたので一体何から説明したらいいのかなーなんて思っていたら、ちょっと診察した医者にすぐ言われたのがこの言葉だ。でも鼻炎に手術っていうのが意外でもある。

「あのね、人の体に直線っていうものはないんだよね。」

「はぁ。」そりゃそうだよね。

「で、鼻の中も当然少なからずみんな曲がっている。すると息を吸った時に入った空気が曲がっている所で渦を巻く。普通の人なら平気なその渦が、もうあなたには刺激になってグズグズするようになる。」

「ははぁ~。」

「そこで、鼻の中の骨を削って、その空気が当たって渦を巻くことが減るようにする。つまり、鼻の中の曲がってる部分をまっすぐにしてやるんだね。これはもちろん鼻の内部の骨だから、外からの見た目は全く変わらないでできるよ。」

「・・・・・・。」ほ、ほね?けずるの?

「あと、鼻の中の敏感な粘膜を切る。要するに感じてる部分を切って取っちゃうから、アレルギー反応も減るわけだね。」

「なるほど・・・・・・。」言ってることはとってもよく理解できる。が、しかし想像するとなかなかハードな内容ではないか?

「体質だから変えたり治すことはできないけど、かなり楽にしてあげられるよ。」

これがちょっと効いた。響きが、「楽にしてあげる」なんて言われると安楽○みたいだけど。

「じゃあ・・・お願いします。」

私はその場で手術の予約を取った。結構予約が混みあっていて、手術はちょっと先の真夏になった。

私の鼻は暑い方が楽だ。寒いと完璧にダメになる。でも温度差が一番ダメなので、夏でも暑い外から冷房の効いた室内に入ると途端に詰まってぐしゅぐしゅになってしまう。肌もアレルギー性皮膚炎と子供の頃から言われているが、こっちは寒い方が調子がいいので困ってしまう。暑いと一気にかゆくなるのだ。そして季節の変わり目にはぜんそくが出ていたので、まあ一年を通して何かしら調子が良くて何かしら調子が悪いという感じだった。

夏の暑い日、私は入院した。

耳鼻科は眼科と一緒だった。入院患者はパジャマを着ていなければいけないので、早速新しく買ったパジャマに着替えてうろうろ散歩してみると、上の階の内科や外科の深刻さと比べて、耳鼻科&眼科はわりと平和なことがわかった。

次の日は朝から手術だ。でもだからと言って9時消灯で消されてしまった真っ暗な部屋の中でも、突然そんなに早く寝られるわけもなく、非常口の緑のライトの下で本を読んだ。いつまでも読んでて看護師さんに怒られた。

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